「西半球秩序」への脅威と
認識されたベネズエラ

 ベネズエラは世界有数の石油埋蔵量を誇る産油国であるが、その国家が機能不全に陥っており、石油産業も壊滅的なダメージを受けていた。

 ベネズエラ産原油は「重質」に分類され、高度な精製技術を必要とする。そのため、これまではカナダ企業などがその役割を担っていたが、アメリカと敵対したことで、中国依存が強まっていった。

 しかし、中国との協力だけではベネズエラの石油産業は再生できず、経済は停滞し、犯罪国家化が進む一方だった。

 国有石油会社は汚職と政治介入によって空洞化し、生産・精製能力は大幅に低下した。国民生活も時を経るごとに厳しくなっていった。

 この状況をトランプ政権は、単なるベネズエラ政府の経済政策の失敗とはみなしていなかった。

 アメリカにとっても重要なエネルギー資源が、無能な統治、犯罪ネットワーク、敵対勢力との結節点の下に置かれていること自体が脅威であり、経済政策の成否は二の次にあった。

 つまり、世界トップクラスの産油国に、マドゥロ政権という麻薬カルテルに関係している政権があることが、アメリカが中核においた「西半球」の秩序に対する深刻な脅威だと認識されたのである。

 そこでトランプ政権は、ベネズエラ石油産業の非政治化と再編を目標に外交政策を立案し、実行に移した。特に石油利権を麻薬カルテルと癒着した国家権力から切り離し、民間企業主体の効率的な産業に再構築することを主眼にした。

「西半球」にエネルギーを政治化する国があることは、今のアメリカでは許容されないことになったのである。