ところが、実際は、管制誘導や計器を頼りに飛ぶ旅客機が空域を通過するには、米軍の許可を得る必要があり、旅客機の定期便設定が難しいという実情がある。このため、旅客機は空域を迂回したり山なりに越えたりするなど制約を受けていると指摘されてきた。

無数の旅客機が横田空域を
迂回するように発着している

 2010年6月の都議会で当時の石原慎太郎都知事は横田空域についてこう答弁している。

「民間航空機の運航の大きな支障になっております。現に、ヨーロッパ発でユーラシア大陸、ロシアの上を通過して日本海に出た飛行機は、残念ながら真っすぐ成田へ向かえませんで、西か東へ迂回して、この空域を避けて、とにかく成田にアプローチするという実態であります」

 わたしたちの調査で判明した横田基地の大型輸送機スーパーハーキュリーズの300キロ超の周回ルート2本は、いずれも横田空域の中にちょうどおさまる形で存在していた。横田基地のCV22オスプレイも首都圏上空で周回することがあるが、その飛行エリアも同様に横田空域内にある。

「ADSBexchange.com」(編集部注/航空機の位置情報をリアルタイム表示するサイト)で、横田空域のあるエリアを飛行するすべての航空機の動きを表示しっぱなしにすると、無数の旅客機が横田空域の上を飛び越えるように通過する一方、その下の空域内でスーパーハーキュリーズやオスプレイなどが周回を繰り返す様子も見てとれる。

 これらの事実は、民間機の進入を事実上制限したうえで、訓練のために横田空域を目的外使用していることを強く疑わせる。

 第二次世界大戦で敗戦したドイツやイタリアには、横田空域のように米軍が管制権を握る巨大な空域は存在しない。

 2013年4月の参院予算委で安倍晋三首相(当時)も、横田空域について「我が国が戦争に負けて米軍の占領を受け入れた名残と言ってもいい」として返還交渉の必要性に言及している。

 ただ、その一方で安倍氏は「我が国の防衛は米軍の力を絶対的に必要としている。この中においてさまざまな交渉を行わなければならない」とも述べ、返還を強く求められない日本側の事情もにじませている。