いまだ全貌が見えない
横田空域のタブーに迫る

 米軍が首都圏の広範なエリアで好き放題と言えるような飛行ができる背景の1つに、横田空域の存在があるのは間違いない。

 その横田空域にはいまだ謎が多い。米軍の運用実態や日米の返還交渉の内容が秘密にされているからだ。

 わたしたちは米軍機の飛行実態を調査する中で、その一端を垣間見ることになる。

 横田空域を巡る謎の1つは、羽田新飛行ルートの開設に関わるものだ。

 新飛行ルートは、民間旅客機が羽田空港(大田区)に着陸する2本のルートのことで、南風が吹く日の午後3~7時の間に都心を南北に縦断するように設置される。2020年3月に運用が始まると、旅客機が都心上空を頻繁に低空通過するようになった(編集部注/北風の日は別ルートをとる)。

 新飛行ルートの開設目的は、将来の航空需要拡大を見据え、国際便を増やすことにあり、日本政府の悲願でもあった。だが、実現するか否かは米軍次第と言えた。新飛行ルートと米軍が管制権を握る横田空域は重なっており、実現には米側の了解が必要だったからだ。

 重なるエリアは、埼玉県ではさいたま市、蕨市、戸田市、朝霞市、和光市、東京都では板橋区、練馬区、中野区。旅客機が通過する時間は2~3分程度だが、距離は約20キロになる。新飛行ルートの管制誘導を切れ目なく行うには、横田空域に入った旅客機の管制を日本側で継続して受け持つことが不可欠だった。

いつの間にか広がった
米軍三沢基地の訓練空域の謎

 航空行政を所管する国土交通省と在日米軍は2019年1月に基本合意を結び、米側は日本側の要請を受け入れ、新飛行ルートの開設の目処がついた。

 ところが、合意から約5カ月後の2019年6月、奇妙なことが起こる。

 米軍三沢基地(青森県)周辺の訓練空域が人知れず広げられていたのだ。空域は「アルトラブ」と呼ばれる臨時の訓練空域で、従来の面積から東京ドーム約4万6000個分の約2160平方キロも拡大していた。

 三沢基地はロシアや北朝鮮の脅威を念頭に、米軍の戦闘機が数十機常駐する実戦基地。「北の槍」とも呼ばれる。