また境界知能児では、定型児と比べて「心の理論」の発達も遅れるとされており、そのため仲間との微妙な社会的サインが理解しにくく社会的関係の構築が困難となり、さらにはイジメ被害が増える可能性もあります。
実際、教師やクラスメートとの関係においても課題を抱えることが多く、指示の理解や授業での集中が難しいことがあります。
その結果、学校での成功体験が少なく自己肯定感が低下しやすい傾向があり、学校卒業後の進学率は一般の子どもよりも低く、職業訓練校や特別支援プログラムに進むことが多くなります。中等教育や高等教育でのドロップアウト率が高いことも報告されています。
成人になっても境界知能の人々は、社会的スキルの発達が遅れることがあり、対人関係の構築が難しい場合が少なくないようです。
また感情の理解や表現に課題があり、対人コミュニケーションで誤解を招きやすいこと、感情の認識や理解(特に他者の感情を推測する能力)が制限されており、これが対人関係の困難さにつながること、感情を言語化する能力に弱さがあること(アレキシサイミア傾向)、などが示されています。
そのため就職率が低く、単純作業や支援がある職場での勤務が主となる傾向があります。境界知能の成人は、安定した職に就くことが難しく、低賃金労働や非正規雇用にとどまることも少なくないようです。
知的障害者の理解は進む一方で
境界知能の支援は遅れがち
精神科的疾患の有病率では、境界知能のほうが一般群に比べ有意に高いという複数の研究結果があります。イスラエルの研究者カルニー・ジジらは境界知能者とそうでない者との精神疾患の罹患(りかん)率について調べ、特に反社会性パーソナリティ障害と非愛着性精神疾患について境界知能者の方が高いことを示しました。
一方で境界知能の人たちは、治療を受ける割合は比較的低く、かつ自身の感情や行動の問題についての自覚は一般群と差がなく、精神科的な問題があっても治療にもなかなかつながらないのです。







