昭和の価値観を完全にアップデートせよ
最後に、フジテレビ問題からの学びをまとめておきたい。
N氏の性加害問題に対するフジテレビの対応は、組織全体の危機対応文化が未整備であっ たことを示している。もともと組織文化が昭和からアップデートされておらず、セクハラ体質や、取引先を社員より優先するような価値観が残っていた。
意思決定においては、トップの判断が潜在的な願望に引きずられ、あるべき法的検証などのステップが踏めなかった。現場の幹部は利益相反の概念を理解しておらず、外部向けの説明では説明責任を果たそうとせず逃げてしまった。
『企業不祥事の真相 「普通の人」を悪者に仕立てる歪んだ構造』(秋山進著、日経BP社)
つまるところ、「性役割意識や顧客優先主義のもと、法的な対応を重視せずに、内向きに処理を行い、情報はできるだけ公開しない」とする旧来型の組織意識に支配されていたのである。
これだけ揃えば問題のある組織といわざるを得ない。現在、日本の大企業を見ると、以下の3つのタイプに分かれているように思われる。
1つ目のタイプは、2006年にJ-SOXが導入されて以降、法的・社会的な対応を重視するようになり、真剣にハラスメント撲滅をも進めている。そして説明責任についても、何かあったらすぐに情報を公開するような体制を有している会社群である。
2つ目のタイプは、フジテレビと同様に、過去の性役割意識や顧客優先主義のもと、法的な対応を重視せずに、内向きに処理を行い、情報はできるだけ公開しない会社群である。
そして3つ目のタイプは、法的な対応もハラスメント対策も後ろ指をさされない程度には実施している。説明責任についても、基本的には公開に積極的ではないものの、状況が許されなくなればそれなりの情報公開はしようと考えている会社群である。
私の体感では、その程度には濃淡があるものの、明らかに3つ目のタイプが圧倒的に多い。そして、これらの会社は危機対応に関して判断の基軸になるしっかりとしたポリシーを持っておらず、事件対応も場当たり的になるため、今回のフジテレビと同様に、“昭和な会社”として認識され、ブランド価値が低下する深刻な事態にならないとも限らない。
よって、第1のタイプに変わっていくべく、コンプライアンス体制や、人権・ハラスメント問題防止の体制を構築すること。危機時には、情報連絡体制を常に構築しておくことなどが重要となる。とはいっても、経営トップがその気にならなければ、“仏つくって魂いれず”ということになりかねない。
“人のふり見てわがふり直せ”が大事である。有名タレントや女性アナウンサーといった派手さに彩られたフジテレビ問題は、俯瞰してみれば、実はどこの会社にも起こりうる、学びの多いケースなのである。







