例:クライアントに新商品の説明をする

 具体的な場面でシミュレーションしてみましょう。

 例えば、あなたが営業担当で、クライアントに新しい商品の説明をしているとします。商品のハイスペックな機能について熱心に話しているうちに、相手が少し退屈そうな顔をし、時計に目をやりました。

「やばい、つまらないかな?」と焦るその瞬間、頭の片隅のコンパスを作動させます。

問い1:この説明をし終えたときに、相手にどうなっていてもらいたいか?「待てよ。この説明のゴールは、相手に細かいスペックを暗記してもらうことじゃない。『この商品、面白そうだから導入を検討したい』と思ってもらうことだ」

問い2:結局、この話で一番言いたいことは何だったか?「最も伝えたいことは、機能の多さではなく、『この商品で御社の業務効率を劇的に改善できる』ということだったはずだ」

 そう思い出したあなたは、スペックの話をスパッと切り上げ、こう話の軌道修正をします。

「……と、少し細かい話が続いてしまいましたね。要するに、この商品を導入すれば、今、3人がかりで丸一日かかっている作業が、たった一人で1時間で終わるようになります」

 どうでしょうか。話のゴールを意識するだけで、伝えるべきメッセージが研ぎ澄まされていくのがわかると思います。

「ゴール」さえ見えれば、言葉は勝手に研ぎ澄まされる

 この考え方は、ビジネスだけでなくプライベートでも非常に有効です。

 例えば、友人を映画に誘うときを想像してください。あなたがその映画の大ファンで、熱量高く語りかけたとします。

「この監督は構図がすごくうまくて、実は1970年代の○×監督のオマージュでもあって、照明の使い方が……」

 などと細かな背景を説明されても、あまり映画に詳しくない相手だったら、「へえ、そうなんだ……(難しそうだし、興味ないな)」とうんざりしてしまうかもしれません。

 ここで、コンパスを作動させます。「相手にどうなってほしいか?」。答えは「一緒に映画に行って楽しみたい」です。そうすれば、相手の関心に合わせた言葉が自然と出てくるはずです。

「週末に、今話題のこの映画行かない? 前に君が好きだって言っていた俳優さんも出てるよ」

 こう言ったほうが、相手は「えっ、本当? 行きたい!」と関心を持つかもしれません。大切なことは、相手に何らかの「変化」を起こすという“説明のゴール”を見失わないことです。

「うまく話そう」「噛まずに話そう」とするのは、もうやめましょう。それは自分自身にベクトルが向いている証拠です。その代わりに、「この話で、相手をどう動かしたいか?」だけを自分に問いかけてみてください。

 今日からの会話で、まずはこの「2つの問い」を頭の片隅に置いてみること。それだけで、あなたの口から出る言葉は、無駄が削ぎ落とされ、今までとは全く違う「相手に刺さる言葉」へと変わっていくはずです。