人生の目標は「200歳まで生きること」。生活は異常に規律正しく、朝は4時59分58秒に目を覚まし、夜は9時に寝る。高校3年の3月までスマホを持ったことがなく、大学に入るまで自転車に乗ったことがない。

 京大にストレートで合格するほど優秀な頭脳と図抜けた行動力の持ち主だが、表情が乏しく感情が読めないため、クラスメートから距離を置かれることもしばしば。しかし本人はそのことをまったく気にしていない。

 こんな具合だ。

成瀬あかりは「推し」である

 成瀬シリーズはとにかく読みやすい。ひとつの話が3、40ページ程度と短く、児童文学かジュニア小説と言ってもよいくらいに文体が平易だからだ。

 しかし当然ながら、成瀬シリーズの読者層は「児童」や「ジュニア」に留まらない。

 刊行元である新潮社の営業部・石井光一郎氏へのインタビューによれば、「一般的に、一般文芸の読者は40~50代が中心で、男性4割・女性6割」だが、成瀬シリーズは「普段あまり文芸書を手に取らない20~30代の方々」や、新聞の切り抜きを手にした「70代くらいの方」が書店に訪れるという。(「朝日新聞Business Hub」2025年4月17日)。

 つまり、全年齢の日本人に読まれている。

 それにしても、なぜ10代の女の子を主人公にした青春小説に、そこまで多くの大人たちが引き寄せられるのか。

 なぜ私たちは、こんなにも成瀬が好きなのか?

 読者にとって成瀬あかりは「推し」であり、成瀬シリーズを読む行為は「推し活」に他ならないからだ。実に2020年代的である。

なぜみんな成瀬のファンになってしまうのか?

 推しとは、「人にすすめたいほど気に入っている人や物」、推し活とは「自分の好きな芸能人やスポーツ選手、キャラクターなどを応援する活動の総称」のこと(いずれも「デジタル大辞泉」より)。

 成瀬は単に個性的なだけでなく、生き方に一切のブレや迷いがない。終始一貫して、自分のやりたいことだけをやっている。誰の意見にも左右されず、世間の「普通」が何であるかに惑わされることなく、思うままに行動する。しかも、その行動は漏れなく他者に好影響を与え、関わった人を皆、良き方向に導く。

 普通の現代人に、とてもそんな生き方はできない。