新刊『組織の違和感 結局、リーダーは何を変えればいいのか?』の発売を記念して、著者の勅使川原真衣さんと、坂井風太さんとの特別対談を実施。坂井さんは勅使川原さんの著書を「すべて読んでいた」そうで、初対面のお二人とは思えぬ熱い話が繰り広げられました。(構成/ダイヤモンド社・大西志帆)

組織の違和感Photo: Adobe Stock

前回≫「才能に恵まれてる」って何? 独りよがりの物差しをロジカルシンキングと混同するな【勅使川原真衣×坂井風太(4)】

全員大事だからこそ「分ける」

坂井風太(以下、坂井) 何かを否定することによる正当性って、私もやっちゃう時ありますけど、やっぱり良くないですよね。

 例えば、一番簡単なメディアへの出方っていうのは、「あれは古い」と言えば終わるんですよ。「古い」とか「あれはダサい」って言うことによって、トレンドセッターをやるのが一番伸びる。

 それは、賛否があるからですね。そうそうって言う人もいるし、古いとは何事だみたいな人もいるから、コメントがバーッと来るんですけど、良くない出方ではある。

勅使川原真衣(以下、勅使川原) 安直ですよね。

坂井 「古い」なんてことはないわけですよ。
 例えば、「Z世代の価値観を知ろう」っていうのは、実は謎だと思っていて。別に「40、50代の価値観を知ろう」でもいいじゃないですか

勅使川原 お互いさまのはずだから、互いの事情や合理性を知ってみる、ってことのはずですよね。

坂井 そう。だから何かを否定することによって正当性を保つのは良くないけれども、人は往々にしてそれをしがちであるし、道具として一番便利だってことです。

勅使川原 あぁそういうことか。だから、今回の本ではいろんなパターン分けをして書いたのかもしれない。

組織の違和感

坂井 なるほど、そういうことですね。

勅使川原 誰も特別扱いしない。誰かだけをフィーチャーしない。なぜなら全員の「他社の合理性」が大事だから。全員をフィーチャーしたいから、逆説的だけど、分けて考えてみる。あくまでも便宜的に。

坂井 わかりました。あくまで“補助線”ですよね。

勅使川原 あ、ちょっと苦手な言葉だけど。それです、それです。

坂井 「っていうことを考えるとわかりやすくあるけど世界は単純ではない」っていう意味での“補助線”

勅使川原 そうです、おっしゃる通りです。

坂井 そういうことか。

勅使川原 悩みながらそこ書きました。これが「答え」ということはないので、ぜひ読者の方々に揉んでいただきたいなぁ。

スピノザの哲学と通じるもの

坂井 私も、高3の時にスピノザを読んで唯一わかったのが、そこだったんです。

 「コナトゥス」って言われてもわかんなかったけど、でもあれは、自分らしさとは違う、自分の本来性に戻る話ですよね。

 要は、自分の本来性を増幅するものが良い、低下させるものが悪いということで、物事の良し悪しというものは絶対的に決まっているわけではないと。組み合わせによって良さが増幅されたりするものだって。

 勅使川原さんの本を読んで、それを思い出したんですよ。

組織の違和感

勅使川原 ありがとうございます。スピノザ的に言えば、「悲しい音楽が悪い」ということはなく、悲しい時に聞けば「良い音楽だね」ってなるっていうのは、確かに実感ありますよね。実は私、青春時代が暗くて。

坂井 そうなんですか。

勅使川原 青春時代って安直に人気者が決められたり。

坂井 うわ、わかる。

勅使川原 かわいい子が一番偉いとか。

坂井 わかる。

勅使川原 モテないやつはダメだとか、頭だけ良くてもとかね。私は、頭は良かったんだけど、それ以外はダメで。

坂井 「頭がいい」……。でもこれは言葉狩りになっちゃうからやっぱよくないな。

勅使川原 曰くつきのことばですよね……。いいんですよ、そういうにが~い顔してもらって

坂井 はい。

勅使川原 スクールカースト的なのもやっぱり選民思想的な。

坂井 わかりますよ。

勅使川原 ね。だから高3の時にスピノザを読んで納得されたっていうのとかなり近いものを感じてしまいました。

わからないものがあるから楽しい

坂井 私の場合、ダンスの上手さでヒエラルキーが決まる謎の高校だったんです。ダンスが上手い男子はそのまま体育祭の実行委員長とかになって、下手だと虐げられるような。

 だから私はもう別のとこに行こうと思って、ずっと図書館に行って、十冊ずつ本を両肩に「ガン、ガン!!」みたいな。

勅使川原 二宮金次郎さん!

坂井 金次郎スタイルで。それで、ずーっとスピノザの本とか三島由紀夫全集とかを読むわけですよ。わからんと思うわけですよ。

 でも、わかんないものがあるってことが楽しかったんです
 なるほど、こんなにいろんな人がいろんなことを考えていて、わかんないことがあるのは楽しいなと思って読んで。その掘削する作業がおもしろかった。

 それが例えばスピノザだったら、昔は2%しかわからなかったけど、勅使川原さんの本を読んで、たぶん10%ぐらいわかった。それが、本当のおもしろさだなと思うんです。

*第6回は1/24(土)公開予定です。