こうした国際的な情報交換制度により入手した情報と国内の制度や申告情報を組み合わせて、国税庁は海外資産の把握に努めている。具体的には、海外への送金や海外口座との資金移動、国内証券会社から国外への証券移管などについて、金融機関から税務署へ報告される仕組みがあり、海外投資の原資の動きや資産の移動を確認する手がかりとなる。加えて、一定規模以上の国外財産を保有する場合に提出が求められる各種調書など、納税者本人による申告情報も重要な資料となる。

 このように複数の情報を重ね合わせることで、海外資産の有無や規模が把握される。申告内容との間に不整合があれば、税務調査の対象となることもある。実際、相続人が「海外だから、税務署にはわからない」と判断して申告から除外した結果、追徴課税に至った事例もある。海外資産は単独で把握されるのではなく、国内資産や資金の流れとの関係の中で確認されると考えていいだろう。

海外資産の相続で気をつけたい
申告漏れが“うっかり”起きやすい3つの理由

 海外資産の申告漏れは、意図的に「隠した」というより、申告作業のどこかで抜け落ちる構造によっても起きやすい。主に次の3つのパターンが考えられる。

(1)そもそも「存在」を把握できず、洗い出しから漏れる

 海外口座や海外証券は、国内資産に比べて家族が存在を知らなかったり、ログイン情報などが見当たらなかったりするなど、相続人側の財産整理の段階で漏れやすい。

 相続税申告は、預貯金や有価証券など金銭に見積もれる財産を漏れなく把握したうえで進めることになるが、最初の洗い出しで漏れると、その後の工程で取り戻しにくくなる。

(2)評価と円換算が難しく、金額確定が遅れて“いったん除外”が起きる

 海外資産は、外貨建てで残高が表示される、価格が海外市場で決まるなど、国内資産と同じ感覚で評価できない。たとえば外貨(現金)は、相続開始日(死亡日)の為替相場(原則として取引金融機関が公表する対顧客直物電信買相場など)で邦貨換算することになる。