また、外国の証券取引所に上場されている株式は、財産評価基本通達上の「上場株式」の評価方法に準じて評価される。

 こうした評価・換算の作業が後回しになると、「金額が確定しないので、後で」と判断したまま、結果として申告から漏れる事故が起きやすい。

(3)海外側の残高証明・取引明細の収集が申告期限に間に合わない

 相続税申告には期限があり、原則として死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内に申告する必要がある。

 海外金融機関や海外証券会社は、残高証明や取引明細の発行、相続手続きの案内、本人確認などに時間を要することがある。期限が迫ると、未確定の海外資産が“仮置き”のまま申告から外れてしまうリスクが高まる。

税務調査における
海外資産のチェックポイント

 海外資産をめぐる相続税調査では、単に「海外に資産があったか」を問われるだけではない。焦点は、申告内容に不自然な抜けや過少評価がないか、そして国内の資産・資金の動きと整合しているかだ。実務上、チェックされやすいポイントは次のとおりである。

(1)海外口座・海外証券などの「記載漏れ」がないか

 税務当局は、CRSなどを通じて氏名、住所、口座残高、利子・配当の受取総額などの情報を自動的に入手している。海外口座や海外証券、貸付金などが相続財産として適切に計上されているかが確認される。

(2)国内の資産・資金移動と「整合」しているか

 海外資産は単独で見られるというより、国内資産との関係の中で不整合がないかが問われやすい。典型例は、国内預金から海外へ送金して投資していた形跡があるのに、相続財産に海外資産が出てこないケースだ。送金や資産移動の痕跡がある以上、「海外資産がどこにあるのか」を説明できない状態になりやすい。

(3)名義と実質が一致しているか

 海外資産は名義だけでは整理できない場合がある。たとえば家族名義の口座や有価証券であっても、実質的に被相続人が資金を拠出し、管理・運用していた事情があれば、相続財産としての帰属が問題になり得る。形式ではなく実質的な財産性が問われる場面がある。