吉田の答えは意外なものだった。
「ピッチャーがどんな球を投げてくるのか、とても楽しみな気持ちで打席に入っている」
夫人は「“もしも、打てなかったら”とは考えないの?」と続ける。やはり、その答えは拍子抜けするほどアッサリしたものだった。
「もしもそこでダメでも、“じゃあ、次はどうやって打とうか?”って考える」
ゆり香さんが解説する。
「彼の場合は、たとえ失敗しても、その経験をきちんと次に生かすことができればOKなんです。普通の人のように“失敗したら、みんなから何て言われるだろう?”と、人の目を気にすることがないんです。
そこにあるのはあくまでも自分。たとえ失敗したとしても、考えているのは“その経験を今後、どう自分の人生に生かすか?”ということだけ。その次しか、見ていないんですよ。そういう点が彼の特徴であり、強みなのかなって、私は思いますね」
そこにあるのは、徹底したエゴイズムである。
チームの勝利のためには、献身的なプレーが要求される。そのためにはエゴイズムは排除されなければならない。しかし、自らのレベルアップ、技術向上のためには自分の信じる道を徹底的に突き進んでいく。それが吉田の強さなのだ。
赤の他人から批判されても
どこ吹く風
一流スター選手であればあるほど、華やかな称賛の一方で、心ない誹謗中傷を一身に浴びることもある。以前は、「それがスターの宿命だ」「一流選手ならではの有名税だ」という声もあった。
しかし、SNSが発達した現在、「宿命」と呼ぶにはあまりにも苛烈で、「有名税」というには、あまりにも税率が高すぎる。匿名ゆえの暴走、集団でのイジメ、いやリンチはとどまるところを知らない。
ゆり香さんが続ける。
「現在はネット社会じゃないですか。SNSも発達していますよね。なので、主人に関する心ない意見をたくさん目にするようになりました。オリックスのときはそれほどでもなかったんですけど、メジャーに行くことが決まってからは、次第にエスカレートしていきました。高額契約が理由かもしれないし、ファンの人たちの期待が大きくなったからかもしれないし、いろんな人から、いろいろなことを言われる機会が増えました」







