しかし、吉田は、常に泰然自若としているという。

「ネット上でひどい言葉を見つけて、“頑張って見返そうね”と主人に言ったことがあるんです。でも、彼はあっけらかんとしていて、平然としているんです」

 そこでゆり香夫人は尋ねる。

「こんなにひどいことを言われて、何とも思わないの?」

 やはり、吉田はまったく動じていない。平然とこんな言葉を言い放った。

「何で、赤の他人のオレのことにこんなに熱くなるのかわからないね。どうして、そんなに熱くなれるんだろう?」

 ゆり香夫人は「これが夫の本質なんです」と続けた。

「彼の場合、もはや他人の目というものが自分の中にないので、何も気にならないんです。他人の目、他人の声が一切、気にならない。それが彼の強みだし、知らない人からのネガティブな発言は真に受けない。

 彼が大切にしているのは、面と向かって直接会った人、自分が興味のある人、尊敬する人の言葉だけです。だから、ポジティブな要素しか入ってこないんですよ。これが、夫の本質なんです」

他人の声で右往左往するより
自分の信じる道を行く

 夫の中には、もはや「他人の目」が存在しない――。

 一般的には、周りを気遣い、決して目立たず、周囲とうまく調和することをよしとする考えがある。一時期、それができない人のことを「KY」と呼び、嘲笑する風潮があった。「空気が読めない」、「空気を読まない」ことは、人と人とのつき合いにおいて、致命的な欠陥のように考えられている風潮もある。

 それでも吉田は、あえて空気を読まない。いや、「空気」の存在を意識することがない。

 夫人が言う「他人の目」に影響を受け、自らの信念や言動を曲げることがない。常に「ベストを尽くす」ことを心がけ、昨日よりも今日、今日よりも明日を信じて突き進む。

 高校時代も、大学時代もプロに入ってからも、もちろんアメリカに渡ってからも、彼はそうやって生きてきた。

 夫人の発言は、吉田正尚の「強さ」の一端が垣間見える分析だった。