ところが「自分でやったほうが早い」という判断を続けていると、部下はいつまでも成長せず、マネージャーは永遠にプレーイングマネージャーのまま。新しい仕事にチャレンジする機会も失われ、マネージャー自身のキャリアも停滞してしまいます。

 部下が育たない原因は、実は自分にあるということに、多くのマネージャーが気づいていません。よかれと思ってやっている行動が、部下の成長機会を奪い、同時に自分の成長機会まで奪っているのです。厳しい言い方になりますが、部下が育たない最大の原因は、上司にあります。

「私が手を下すほうが最適だ」という判断を繰り返していると、チーム全体の成果水準は永遠に横ばいのままです。これは、マネージャーが陥りやすいトラップであり、ジレンマでもあります。

 チームの成果を最大化するためには、各メンバーの能力を最大限に引き出すことが不可欠です。

 しかし、マネージャーが仕事を抱え込んでいては、チーム全体のキャパシティは永遠に増えません。結果として、より大きな成果を生み出すことができなくなってしまうのです。

部下の成長を左右する
「組織のコンディション」

 ただし、このアプローチには前提条件があります。

 組織のコンディションが整っていることです。メンバーが疲弊していたり、メンタルが不安定であったりする状態では、能力以上にストレッチした仕事から学ぶことはできません。

 組織のコンディションが良くない場合は、まずそこから改善する必要があります。労働量が多すぎるなら人員を補充する、関係性が悪いなら相互理解のワークショップを行う、心理的安全性がないならアサーティブなコミュニケーション(相手を尊重しながら、自分の意見や感情を率直に、建設的に伝える)ができる環境を作る。こうした基盤整備が先決です。

 できていない組織は、自分たちだけでは気づけない問題を抱えている可能性があります。その場合は、経営企画や人事部門が介入したり、外部のコンサルタントに相談してシステムコーチングやグループコーチングを受けたりすることも有効です。