第51回衆院選が公示され、第一声を上げる高市早苗首相(自民党総裁・中央)。左は日本維新の会の吉村洋文代表、右は藤田文武共同代表=1月27日東京・秋葉原駅前 Photo:JIJI
高市政権発足後に進んだ円安は、解散総選挙の表明で加速したが、日本銀行・FRB(米連邦準備制度理事会)によるレートチェック観測が投機的円売りに歯止めをかけ、ドル円は足元では150~155円のもちあいの状態にある。もっとも円安トレンドの反転はなお不確かで、積極財政継続による信認低下が再燃すれば円安・金利高の再来も十分にあり得る。積極財政継続については総選挙の結果が大きく影響する。選挙結果別にドル円を中心とした相場の動きを検証する。(マーケット・リスク・アドバイザリーフェロー 深谷幸司)
日米の“介入スタンバイ”が投機を止めた
ドル円レンジは下方へ移動
2025年10月の高市早苗自民党総裁誕生以降、為替市場では円安傾向が顕著となり、26年1月の高市首相の解散総選挙の表明でさらに円安が加速した。これに対し、高市政権は足元で円安へのけん制姿勢を一段と強めている。
1月23日、為替介入の準備段階とされるレートチェックを、東京市場で日本銀行が、さらに米国市場でFRB(米連邦準備制度理事会)が実施したとみられる。それまでは片山財務相があらゆるオプションを排除しない、としてけん制発言を続けるにとどまっていた。
しかし、今回は介入実施がスタンバイ状態であることを示した。加えて、財務省・日銀だけではなく、米国財務省・FRBの協力を得ているところが大きなポイントである。
日米協調介入の可能性は少ないとみるが、FRBによるレートチェックは日本の通貨当局によるドル売り円買い介入をトランプ政権が容認していることを示している。貿易収支の改善を重視するトランプ大統領にとって円安是正は望ましいことだからだ。
少なくとも日米通貨当局の意向が一致しているとなれば、投機的に円売りを進めるのは難しくなる。ドル円相場は160円台を試しつつあったが、ひとまずドル円のレンジは下方に移動した。155円からドル高円安サイドはドルの上値が重く、円の下値が固くなったのではないか。
ただ、円安トレンドが円高トレンドに転じたとはいい難い。せいぜい150~155円のレンジでもちあい横ばいになった可能性が生じた程度だろう。日本の財政悪化を材料とした円売り・円安が再燃するリスクはくすぶっている。
振り返れば、高市総裁誕生後の円安再燃は、当初に掲げた積極財政・金融緩和を基軸とするリフレ政策、いわばアベノミクス2.0に原因がある。
コロナ禍に対し先進各国は経済対策として極端な財政拡張と金融緩和を実施した。コロナ禍が収束し経済が正常化すると、財政出動と緩和策のためにグローバルな高インフレが生じた。
これに対して、日本以外の主要先進国の中央銀行は急速な金融引き締めを実施し、インフレ率が低下し通常の状態を取り戻した。そうした流れに反する形でリフレ策を掲げる高市政権に対して不信感が強まったことが、政権発足以降の円安の背景だ。
発足当初は、財政悪化懸念と低金利継続懸念が円安を加速させたものの、その後高市政権は物価高対策として円安に対処する必要に迫られ利上げ容認に転じた。ただ積極財政は堅持したままである。金融正常化のペースは緩慢で円高材料としては弱く、財政悪化懸念による円安の勢いが勝っているのが現状である。
25年秋以降、財政悪化懸念で円安進行に合わせて国債価格は下落、長期金利が急騰している。金利上昇は通常なら通貨高要因だ。しかし、円長期金利上昇に逆行して円安が加速しているのは、やはり日本の財政と通貨に対する信認が低下しているためといえる。
一方で日本株は堅調に推移している。高市政権のリフレ政策に対する期待もあろうが、日本経済が長引くデフレから脱却したとの認識も大きい。日本株は長らく割安に放置されてきたが、その修正が本格的に始まったともいえよう。
株価が堅調に推移していることからトリプル安とはなっていない。これが英国で生じたトラスショックとの違いだ。この状況を総括すれば、日本企業はOKだが、日本政府は駄目ということか。これはなお大幅な黒字を維持する日本の経常収支の内訳に応じた評価ともいえる。政府部門の大幅赤字を補って大いに余りある民間部門の大幅黒字という構造そのものだ。
こうした市場の状況で総選挙を迎えることとなった。次ページでは、選挙の結果別にドル円相場を中心として市場の動きを予測する。







