高市首相Photo:Anadolu/gettyimages

高市首相は衆院選公示直前、「消費税の食料品2年間ゼロ」「年度内実施を目指したい」と、消費減税に前のめりで動き出した。野党の多くが減税を掲げる中、選挙対策のにおいが濃厚だが、財源や減収分の社会保障費の穴をどうするかは不明な一方、GDP(国内総生産)押し上げ効果は少ない。国民生活への悪影響は大きく、消費減税は割に合わない政策だ。

高市首相「希望は年度内」実施
慎重姿勢から一転、前のめりに

 衆議員選挙が1月27日に公示され、2月8日投開票までの短期戦が始まった。

 経済政策では、ほとんどの野党に加えて与党も消費税減税を掲げる異例の構図だ。

 とりわけ、高市早苗首相は、消費減税に慎重な姿勢だったが、衆院解散を表明した19日の記者会見では、「私自身の悲願」と語り、公示前日の26日の日本記者クラブ主催の党首討論会で、食料品の消費税率を2年間ゼロにすることを表明した。

 実施時期についても、設置を表明している国民会議で「夏までに結論が出たら臨時国会に法案を提出できる」「希望は、できたら(2026)年度内を目指したい」と語り、前のめりで動き出した。

 自民党の選挙公約にも、消費減税について、超党派での国民会議設置とともに「検討を加速させる」との文言が首相の意向で加えられた。

 今回の選挙では、野党も多くが「恒久的な食料品の消費税率ゼロ」(中道改革連合)、「一律5%の消費税減税」(国民民主党、共産党)、「消費税廃止」(れいわ新選組、社民党など)と、総じて消費税減税を掲げている。そうした野党との対抗上、首相も消費税減税の意向を表明せざるを得なかったのだろう。

 だが食料品の消費税率を2年間ゼロにすると、各年5兆円の税収減となる。また、仮に2年間の時限措置として始めても、2年後に税率を元に戻すことは難しく、結果として恒久減税となる可能性が否定できない。

 高市首相は、消費税減税の財源を確保し、赤字国債の発行に頼らないと説明している。財源は具体的には明示していないが、補助金や租税優遇措置の見直し、税外収入の充当などを検討しているようだ。

 だがそれぞれの規模は大きくなく、それらから5兆円の財源を捻出するのは簡単ではない。また、日本銀行の国庫納付金や国の資産売却などの税外収入については、既に政府の歳入に充てられており、新たな財源に位置付けることは問題だ。

 食料品の消費税率を2年間ゼロにするという政策は、逆進性を緩和することや、短期間で限定的ながらも経済効果を生じさせるというプラス面がある。

 しかし、首相が物価高などへの家計支援策として導入検討を表明している給付付き税額控除制度とも重なる上、社会保障の基礎的財源を損ねて財政を悪化させる、円安・債券安を通じて経済や国民生活に悪影響を与えるといった大きな弊害と比べればメリットは小さい。

 消費税減税は、国民にとっても割に合わない政策だ。