こうして私の居場所は長姉家族に奪われることになったのです。

 私が使っていたスペースは、姉とその息子の龍(3歳)に奪われました。数週間後には夫も引っ越してくるとなると、私は屋根裏部屋に移動しなければなりません。

 この部屋は基本的に荷物置き場で、幼い頃悪いことをすると「反省するまでここにいなさい」と言われて閉じこめられた監獄のようなところです。

優しい言葉をかけてくれる
義兄に好意を抱いていた

「光一さん、久しぶり!」

 数週間後、姉の夫が自宅に越してきました。光一は、私が大学院を受験する時、家庭教師として勉強を見てくれていました。

「葵ちゃん、龍が迷惑かけてるみたいでごめんね。今、論文追い込みなんだよね」

「そうなの。そう言ってくれるのは光一さんだけよ。わかってもらえて嬉しい!」

 私は姉の前で、わざと光一の腕に絡みついてみせました。

「ちょっと葵、光一さん疲れてるんだから、荷物運ぶの手伝いなさいよ」

 尖った物言いから、姉の嫉妬を感じました。

 私はどっさりと段ボール箱に入れられた書物を、2階の光一の部屋まで運ぶことにしました。

 そこは、姉が来るまで私が使っていた部屋でした。

「葵ちゃん、ごめんね……。僕たちのせいで狭い部屋に移ったんでしょ?」

 光一はすぐに私の苦境を察してくれたのです。

「良かったら、ここに本置いていいよ」

「ありがとう。部屋が狭いので凄く助かります」

 光一の配慮に、姉はすぐに反論しました。

「ちょっと葵、図々しいわね。ここは光一さんのプライベートな空間なんだから」

 それでも光一は、「葵ちゃんも一緒に使おうよ。お互い研究者なんだし」

 姉は嫉妬心も剥き出しに、「光一さん、何言ってるのよ。研究者だなんて、ただの腰掛院生でしょ」

 実態は、姉の言う通りです。それでも光一の言葉には、同志という意味がこめられている気がして嬉しくなりました。私は姉よりずっと近い距離にいるのだと。

叱責を繰り返す姉に
復讐すると心に誓った

「ところで、論文の進み具合はどう?」

 光一は棚に本をしまい込みながら、私の研究の話を始めました。

「それがね、煮詰まっちゃって……。光一さん、スランプの時はどうしてるの?」
「映画を見に行ったり、散歩したり、思い切って机から離れるのもいいかもよ」
「確かに、そうかも」
「これからは毎日一緒なんだから、いつでも相談に乗るよ」
「本当に!嬉しい。凄く心強い!」