その甲斐あって、私は難関と言われる国立大学の大学院に合格することができました。私は光一に大学卒業と大学院合格のお祝いをして欲しいとせがみました。
せっかくだから家族で、という光一に、私はたまにはふたりがいいと、自分たちだけで食事をする約束を取り付けました。
義兄の子を身ごもった瞬間
極上の幸せを感じた
私はこの日、光一に想いを告げる覚悟を決めました。姉から夫を取り上げるつもりはありません。特別な関係を結ぶことができれば、それでいいと思いました。私にとって初めての男性は、光一でなければ嫌だったのです。
光一は拒まないだろうと考えていました。光一なら秘密を守ると。その自信がどこから湧いたのか今ではよくわからないのですが、案の定、光一は私を抱きました。戸惑っていましたが、ふたりの間に流れる空気に抗えなかったのです。
姉と同い年の光一には知識ではとても敵いませんが、人生経験は私とそれほど変わらない。光一にとって姉は初めての女性で、おそらく私が最後の女性になるのでしょう。
私たちのような狭い世間で生きる人間にとって、わかり合えるのは身内しかいないのです。当時、光一はなかなか妊娠できずに焦っている姉に悩まされていました。
「正直、菊乃との関係に疲れてる……。とにかく、妊娠しなければと必死なんだ。なんだか自分が子を産むための機械として扱われている気がして……」
姉が求めていたのは家族、私が求めていたのは光一。そして私は、光一の子どもを妊娠したのです。
「もうどうなったとしても、全部正直に家族に話すよ。すべて僕の責任だから」
『お金持ちはなぜ不幸になるのか』(阿部恭子、幻冬舎)
妊娠を伝えた時の光一の表情は今でも忘れることができません。私はこの瞬間を本当に幸せだと感じました。同時に、この幸せは長くは続かないこともわかっていたのです。
「子どもに罪はない。3人で暮らそう。菊乃には申し訳ないけれど、すべて僕が責任を取る……」
私は、父親になるという光一の言葉を聞くことができただけで十分満足でした。そして光一の反対を押し切って、子どもを堕ろしました。私は子どもが欲しかったわけではなく、光一の心が欲しかったのです。







