荒廃したロンドンの
信じがたいほどの復活劇
するとそのあとで奇跡のような展開が待ちうける。あなたが街の南側や、ネズミのいない田園地方の邸宅で息をひそめて難を逃れたら、1350年の春までには潜伏を解くか元の場所に戻るかしたほうがいい。
なぜかといえば、いったん荒廃したとはいえロンドンはこれから信じがたいほどの復活を遂げるからである。
流行が収まった時点のロンドンでは通りに買い物客の姿が絶え、畑からは農夫が消えていた。にもかかわらず経済に破壊の爪痕が残るどころか、産業革命時以外では過去2000年で最も大きく生活水準が向上していった。大いなる死と苦しみがにわかに大いなる繁栄へと変わったのである。
労働需要は急増し、賃金は3倍になって収入格差が縮まった。そしてそれらが組みあわさってイングランドの過酷な農奴制はついに滅びた。
『とんでもないサバイバルの科学:恐竜絶滅から、ポンペイ、黒死病、タイタニックまで、史上最悪レベルの大事件をどう生きのびる?』(コーディー・キャシディー(著)、梶山あゆみ(翻訳)、河出書房新社)
ロシアと東ヨーロッパでは、土地を所有する上流階級が結託して労働者階級の賃金と生活水準をまんまと低く抑えたために、黒死病が社会変革につながった面はほとんどなかった。
しかし西ヨーロッパでは、所得格差が縮まって賃金が上昇したことが広範な影響を及ぼす。労働需要の高まりは女性の就労を促して平均結婚年齢を押しあげ、平均家族数を減少させて人口増加率を低下させた。
マルサス的経済においてはこれが長期にわたる生活水準の向上をもたらすことになる。ロンドンのように沿岸に位置する商業の中心地では、ヨークなどの内陸都市より賃金の上昇スピードが速いうえに復興も短期間で進んだ。
景気が上向いたのでインフラの改善に投資する余裕が生まれただけでなく、生産性の高さという強みを手に入れた。その強みは以後も衰えることがなかった。
嘘のような話だが、人口の半数を失ったばかりの都市としては理屈に合わないほどの明るい未来がロンドンを待っている。あなたがどうにかして陰鬱な18カ月を耐えて生きのこれば、本来の目的だった活気あふれる中世の休暇を楽しめるかもしれない。







