CEOの選任は最終的に、フルタイムの共同創業者のうち、上級職であるブロックマンとサツキヴァーに委ねられた。
2人は最初、マスクを選んだ。するとアルトマンがブロックマンに電話をかけ、マスクは一緒に仕事をするのが難しい人だと言って翻意させた。
次にブロックマンがサツキヴァーを説得した。「僕は創設当初から、サムにCEOになってもらいたかった」とブロックマンは2023年にWSJに語っている。
「会社にはサムの形をした『穴』が開いていて、僕らはあえてその穴を埋めずに、何年も待っていたんだ」
同年9月、ブロックマンとサツキヴァーはマスクとアルトマンに、苦しい胸の内を打ち明けるメールを送った。
「あなたと一緒に仕事がしたいという気持ちはとても大きいし、それを叶えるためなら会社の株式や指揮権、僕らの解雇権など、何でも提供したいのはやまやまだ」と、ブロックマンとサツキヴァーはマスクに宛てて書いている。
マスクもアルトマンも
CEOとしては信じられない
だが懸念があった。「今の構造で行くと、いつかAGI(編集部注/人間をはるかに超え、人間を滅ぼすリスクさえ持つ自律的な人工汎用知能Artificial General Intelligence)の一極的で絶対的な支配を、あなたが手にすることになるかもしれない。最終的に実現したAGIを支配するつもりはない、とあなたは言うが、今回の交渉で、あなたが絶対的支配を極度に重視していることがはっきりした」
加えて、オープンAIが「AGIの独裁を避けるため」に設立されたことを考えると、「あなたがその気になれば独裁者になれるような構造を持つことは愚策」に思われる、とつけ加えた。
2人はアルトマンについても懐疑的で、とくに彼の政治的野心をふまえて、同じメールに続けて書いた。「僕らはこのプロセスでの君の判断を完全に信用できずにいる。なぜなら君のコスト関数〔意思決定の原理〕が理解できないからだ」と、高校の数学コンテストの常連らしい言葉遣いでアルトマンに宛てて書いている。
「君にとって、なぜCEOの肩書きがそんなに重要なのかがわからない。君が挙げた理由は変化しているが、何がその変化を駆り立てているのかがよくわからない。AGIは本当に君の第一の目標なんだろうか?それと君の政治的野心はどうつながっているんだ?君の思考プロセスはどう変わってきたのか?」
これらはブロックマンというよりはサツキヴァーの思いだったが、程度の差こそあれ、2人とも同じ懸念を持っていた。







