ブロックマンとサツキヴァーが公平な姿勢を見せようとしたにもかかわらず、マスクは彼らの真意を読み取った。

「わかった、もうたくさんだ。我慢の限界を超えた」と、マスクはメールを受信して数時間と経たずに返信した。

「オープンAIを非営利のままにするか、さもなければ自力でやるんだな。今のまま続けると君たちが固く誓わない限り、もうオープンAIには資金を提供しない。君たちに無料で起業資金を提供する馬鹿者にはなりたくない。議論はここまでだ」

 マスクは資金提供を差し止めたが、家賃はしばらく払い続けた。ティール(編集部注/ピーター・ティール。ペイパル共同創業者で、投資家。イーロン・マスクはペイパル時代の元同僚。オープンAI初期の支援者であり、アルトマンのメンター)の大学時代からの友人でリンクトイン共同創業者のリード・ホフマンが手をさしのべ、社員の給料と諸経費を肩代わりしてくれた。

グーグルと戦うためには
テスラと合併するしかない

 マスクは2017年末にオープンAIのカーパシーをテスラに引き抜き、AI部門責任者に据えて自動運転技術の開発を指揮させた。

 だが2018年1月になると、サツキヴァーとブロックマンにメールを送って、オープンAIをテスラと合併させることを熱心に勧めた。

「現状のオープンAIは現金を燃焼していて、今の資金調達モデルでは(8000億ドル規模の)グーグルと太刀打ちできる規模には到達できないように思える」とマスクは書いた。

「営利に転換すれば、いずれは持続可能な収益源が得られるかもしれないし、今のチームメンバーを考えればおそらく多額の投資を呼び込めるだろう。

 だが組織を一からつくり上げるのは、AI研究から焦点が逸れるし、時間もかかる。それにグーグルの規模に『追いつける』かどうかはわからないし、投資家が誤った方向に進むようプレッシャーをかけてくるかもしれない。

 私の考える一番有望な道は、前にも言ったように、オープンAIがテスラの一部門になって、テスラをドル箱として活用することだ」

 マスクはこれをウィン・ウィンと位置づけた。

「今後2、3年で完全自動運転が実現したら、車/トラックがたくさん売れる」。そうなればテスラの時価総額が上がり、オープンAIはテスラの収益を利用してAI開発を拡大できる。

「10年以内にグーグル規模の持続可能な資本に到達できる方法は、それ以外に考えられない」