「いやいや、それならきちんとメリットやデメリットを出して、国会で論戦をすればいいだけの話だろ」と思うかもしれないが、仮にそういう議論が活発になって積極財政はよろしくないと結論が出ても、「ザイム真理教の仕業だ」とか「そんなもんやってみなくちゃわかんねえだろ」という遺恨が残ってしまうのだ。
しかも、積極財政を掲げる高市首相が70%という圧倒的な国民支持を得て、各社の世論調査でも消費減税を望む声が多いという現実もある。この世論を理屈で潰しても、すぐに「高市さんの無念を晴らせ」なんて動きが盛り上がっていくだろう。
なぜそんなことが断言できるのかというと、歴史の教訓だ。「令和ファシズム論ーー極端へと逆走するこの国で」(筑摩書房)を上梓した井手英策・慶應義塾大学経済学部教授は、「中央公論」のインタビューでこのような指摘をしている。
《中間層の生活水準が下がり、生活不安を抱えるようになると、その中間層を巻き込んで受益者にしていくからバラマキが起こる。反緊縮が時代の空気になるのです。ファシズム前夜の日本では高橋是清蔵相の積極財政があり、ドイツではパーペン政権、シュライヒャー政権の財政膨張がヒトラー登場を準備しました。国旗、国歌、そしてバラマキ―既存のやり方が通用しない、イデオロギーとお金で人を束ねるしか方法がない、だから「危機」なのです》(中央公論.jp 2025年11月26日 https://chuokoron.jp/politics/127617.html)
少子高齢化、社会保障の膨張が待ち構えるこれからの日本は「生活不安」がさらに強まる。つまり、常に「反緊縮」という空気に包まれて積極財政こそが正義になる。ほぼすべての政党が「減税」を訴えているのがその証左だ。
ただ、こういう「歴史の教訓」はほとんどの国民には響かない。むしろ「現実を直視しないインテリの戯言」だとか「反日左翼」とレッテルを貼られて嫌悪され、むしろ「反緊縮」が盛り上がる“燃料”にされてしまう。
大政翼賛会のなかで「アメリカには勝てないから日米開戦だけは回避しよう」と叫ぶと「軟弱」「親米」と袋叩きにされ、それに溜飲を下げた国民の「アメリカをぶっ潰せ」という世論を逆に盛り上げることとなったのと同じだ。







