その理由について、籠谷教授はこのように述べた。
「CAR-T細胞は患者さん自身の血液から個別に作る薬であるため、製造には大きな手間とコストがかかり、大量製造することができません。高額療養費制度の対象ではありますが、薬価が非常に高く、医療経済的な課題も抱えています。このため、効果が示されているがんでも適用を限定せざるを得ないのです」
また、CAR-T療法は、固形がんを中心とする他のほとんどのがんには有効性が十分に示されておらず、これからの研究課題となっていっている。この部分については、研究者の方々の奮闘を待つばかりだ。
老化細胞を除去できる!?
CAR-T療法でのがん予防も
がん治療に大きな可能性を秘めているCAR-T療法。これを予防に活用することはできないのか。籠谷教授に聞くと、興味深い答えが返ってきた。
「遺伝子の変異を誘発することが知られている老化細胞(編集部注/体内の細胞は、限られた回数しか分裂・増殖することができないと言われている。細胞分裂の限界を発見者の名前にちなんで「ヘイフリックの限界」と呼ぶが、限界まで分裂した細胞を「老化細胞」と呼ぶ)だけを攻撃するCAR-T細胞を使ったCAR-T療法に、その可能性があります。
老化した細胞は体に害を及ぼす物質を色々と出していて、それが原因で慢性炎症や遺伝子の変異を起こし、細胞のがん化を引き起こすことがわかっています。例えば、老化細胞の表面に現れるuPARという抗原を狙うCAR-T細胞を作ることで、老化細胞を体内から消去することができます」
老化細胞だけを攻撃するCAR-T細胞は動物実験レベルではもうできていて、血糖値を改善したりがんの進行を遅らせたりする効果が報告されているという。
「究極の目標は、老化細胞を排除してがんを抑制すること、もっと言うと寿命を延ばすこと。それが可能かどうかは、基礎研究の段階であり未知数ですが、すごく面白いと思っています」と籠谷教授は期待を語る。
がん細胞発生につながる
慢性炎症を抑制できるかも?
もう1つ、籠谷教授が新しく作り出したものに「人工サイトカイン(編集部注/サイトカインは主に免疫細胞から分泌される低分子のタンパク質のこと。細胞間の情報伝達の役割を担っている。数多くの種類のサイトカインがあり、それぞれ細胞表面に存在する特異的受容体を介して細胞内へ情報が伝達される)受容体」がある。







