そこで点群データからレール部分を進行方向200ミリの範囲で取得し、圧縮することで密度の高いレール断面データを抽出。これにレール基本形状をマッチング処理することで基準点を特定し、左右の基準点から軌道中心線を導き出す。

 GNSSの絶対座標、キロ程、軌道中心線と電子平面図システムを組み合わせ、点群データで描写した構造物に「第○○踏切」などの情報を結び付けて設備情報を管理している。また、点群データの性質上、拡大するほど点の密度が低下して物体の把握が難しくなるため、線路は過去に撮影した映像と組み合わせて、道床の状態や枕木の材質を確認している。これらは現在、複数のデータベースを同期して表示しているが、将来的には統合も視野に入れる。

データが蓄積されれば
経年変化の追跡も可能に

 JR西日本に出向し、RaiLisの開発に携わったアジア航測の担当者は、鉄道の現場はキロ程と軌道中心線で座標が示せてしまうため、絶対座標に依拠した「地図を作る文化」がないことに驚いたという。

 もちろん図面が存在しないわけではないし参照するのだが、現場の最新状況を管理する統一的なシステムが存在しないので、工事計画の立案にあたっては都度、現地に行って測図していた。それがMMSで測量した点群データを中心に情報を集約することで、デジタルツインが浮かび上がってくる。

 同社は2021年以降、新幹線・在来線の線路長計8000キロを年1回、測量しており、取得したデータはアジア航測に送信され、データ処理される。高価なセンサーを用意するイニシャルコスト、日々データを処理するランニングコストが相応にかかるだけに、MMSの取り組みは建築限界測定だけでは元が取れない。そのため、JR西日本は当初から点群データを広い分野で横断的に活用する方針を固めていた。

 そこで点群データを現場の低スペックのパソコンでも閲覧可能な「RaiLis Viewer」で社内の全系統に配信し、活用方法を募ったところ、施設(土木、建築、機械)・電気部門の工事における手順や重機配置などの工事シミュレーション、標識類を管理する運輸部門へと広がった。今後、さらにデータが蓄積されれば経年変化の追跡にも活用していきたいという。