筆者はこの取り組みを最初に聞いた時、アジア航測のMMS技術をそのまま鉄道に導入したという一方通行のイメージだったが、MMS技術を鉄道の現場で使うためには、実情にあわせたカスタマイズと運用体制の確立が不可欠だった。そういう意味でRaiLisはアジア航測の技術とJR西日本のノウハウを組み合わせた、正真正銘の共同開発だった。

東急電鉄事故を踏まえた
緊急点検で大きな成果

 最後に、点群データが大きな成果を挙げた直近の事例を紹介したい。昨年10月5日に東急電鉄で発生した列車衝突事故を受けて、国交省は信号装置の条件設定が不十分なため列車が接触する可能性のある個所の緊急点検を求めた。

 JR西日本は11月27日までに全線で点検を完了し、東海道線高槻駅、芦屋駅、山陽線土山駅、大阪環状線天王寺駅、紀勢線和歌山駅で問題を確認したが、RaiLisはこの点検作業でも活躍した。

 空間上のシミュレーションはRaiLisが最も得意とするところだ。点群データから平面図を作成し、信号区間を区切る「絶縁継ぎ目」の位置を抽出。絶縁継ぎ目の端部に停止した場合の車両と、隣接する分岐器(ポイント)を通過する列車の距離をRaiLis上で計算した。

 キロ程を基準とした線路や信号設備の図面は個別にあるが、絶対座標で結びついていないため、実際の距離は現地で測量しなければわからない。実際、JR旅客6社及び貨物のうち、11月27日時点で点検が完了していたのは、JR西日本と規模の小さいJR四国だけだった。各社とも図面上の確認は完了したが追加の現地調査が必要としているところからも、RaiLisの効果が分かるだろう。

 MMS技術で点群データ化を進める鉄道事業者は他にもあるが、これだけの規模で横断的に取り組んでいるところはないのではないか、と担当者は胸を張る。RaiLisは2019年から外部に商品展開しており、既に大手事業者でも採用例があるという。JR西日本のオープンイノベーションは、デジタルツイン分野でも鉄道事業を変えていきそうだ。