複雑化&高級化の結果
顧客にもたらされた“新たな価値”とは?

 この複雑で高額なシステムによって、ゲストが得た価値は何なのでしょうか。

 もちろん、ディズニーのことが大好きでいくら払っても構わない、という熱狂的なファンもいることでしょう。そうではない、一般的なファンにとっても、少なくとも以下のような価値はありそうです。

 一番わかりやすいのは、新しい設備の導入です。

 例えば、2024年6月に大々的に開業した新エリア「ファンタジースプリングス」は総投資額3200億円で、東京ディズニーシー開業以来、最⼤規模の拡張でした。『アナと雪の女王』や『塔の上のラプンツェル』といった人気ファンタジー映画の世界を模したものですが、エリア内には「入場制限」が設けられ、ゆったりとした空間となっています。

 他にも、750億円と3年の年月をかけた東京ディズニーランドの大規模開発(「美女と野獣“魔法のものがたり”」などのアトラクションやシアター、レストランなど複数施設が2020年9月にオープン)が行われたり、ディズニーシーのナイトショー「ビリーヴ!~シー・オブ・ドリームス~」が2022年11月に新設されたりと次々と新設備が導入されています。

 設備の追加に加え、コロナを境に大きく変わった顧客にとっての新しい価値が、「園内のゆとり」です。

 コロナ前、3256万人という過去最高入園者数を記録した裏側でパーク内には限界が漂っていました。人気アトラクションは2~3時間待ちが常態化し、トイレに30分以上並ぶこともあるといった状況でした。コロナ後は入園者数の上限を意図的に抑え、コロナ前の15%減程度で維持しています。

 あえて「詰め込まない」という判断をしたことで、待ち時間の短縮や快適な滞在環境が実現しました。これは単なる混雑緩和ではなく、提供価値の再定義だったといえます。