まさかの逮捕、そして「学籍抹消」へ

 ところが「その筋」はマイルズさんと彼を見守る人たちの意見には同意しなかった。マイルズさんはビラを配り始めた翌日、香港警察の国家安全処によって煽動容疑で逮捕されたのである。それと同時に、親中メディアが「混乱に乗じて『黒暴』(中国当局によるデモ関係者の呼び方)が復活の機会を狙っている」とする主旨の論説を展開した結果、一夜のうちに民間ボランティアたちが街頭から姿を消した。火災についてネットで論じ続けてきた人たちも次々と圧力を受けて、口を閉ざさざるを得なくなった。

 マイルズさんは2日後に保釈された。だが、彼はあの大型マンション火災事件で自主的に立ち上がり、被災者を支援し、原因追及を求めた匿名市民を象徴する人物となった。

 その彼が、すでにすべての履修単位を取り、あとは今年3月に卒業するだけというところで、あの香港中文大学から「学籍抹消」、つまり放校処分を受けたと発表したのだ。このニュースは再び、香港中を駆け巡った。

「結果ありきの裁判」という烙印

 マイルズさんによると、保釈された12月1日に学校から「紀律諮問委員会を開くので出席するように」というメールを受け取り、学校とやり取りを続けたが、具体的に何について問われるのかわからないままに委員会に出席した。その場で開口一番、その旨を問うと、出席した学校側の委員から「今はお前が尋ねるときではない。質問するのはわたしたちだ」と言われたという。

 そして告げられたのは、「きみには不適切な行為があった」だった。だが、「不適切」とは何か。マイルズさんは自分は釈放されており、校則に「不適切行為」として明示されている有罪判決も受けていないことなどを伝えた。学校側もマイルズさんに明らかな有罪の証拠がないため、結局今回の拘束について深く立ち入ることをしなかったらしい。

 最終的に2月に届いた通知では、マンション火災での「逮捕」については深く立ち入らないとする一方で、在学中に3回の「不適切な行為があった」ことを理由に、「校則に照らして学籍を剥奪し、退学処分にする」と伝えられた。だが、そこに挙げられた理由のうちの一つは、先の諮問委員会を彼が「カンガルー・パネル」(結果ありきの裁判)、「サーカス」(茶番)と呼び、敬意に欠ける態度を取ったこと。もう一つは、彼が諮問委員会にかけられたことがネットで噂になり、「機密のはず」の情報が流れたのはマイルズさんが「自ら情報をリークした可能性が高いと考えられる」と委員会側が判断したことだとされていた。