問題は、日本の医療界がこのアメリカ基準をそのまま輸入し、美学的な「やせ文化」と結びつけてしまったことです。しかし、日本人の死因トップは当時からがんであり、心筋梗塞で亡くなる方はアメリカと比べて格段に少ない状況です。疾病構造がまったく異なるのに、同じ基準を当てはめることには無理があります。
がんに対抗するために最も必要なのは免疫力であり、その免疫力を維持する材料となるのが、これまで悪者扱いされてきたコレステロール(脂質)やたんぱく質です。先進国の中で唯一、日本だけでがん患者の死亡数が増え続けているという事態の背景には、過剰栄養よりむしろ低栄養があるのではないかと私は考えています。
真面目なAさんが寝たきり、不真面目なBさんが元気な理由
私が実際に診てきた患者さんの例をご紹介しましょう。Aさん(72歳男性)は現役時代から非常に真面目な方でした。定年後も医師に言われた通り「塩分控えめ、脂質控えめ」を徹底し、大好きだったトンカツも年に一度とがまん。野菜中心の食事で、体重は20代のころと同じスリムな体型を維持されていました。
しかし70代に入ってから、Aさんは急に風邪をひきやすくなりました。一度風邪をひくと長引き、肺炎になりかけて入院。退院後も食欲が戻らず、みるみるやせてしまい、今では「外に出るのが怖い」と家に引きこもりがちになってしまいました。典型的なフレイル(虚弱)のスパイラルに陥ってしまったのです。
一方、Bさん(72歳男性)は少しお腹の出た、いわゆる「ちょいワル」な雰囲気の方です。健康診断で「やせなさい」と言われても「はいはい」と聞き流し、週に数回は友人と焼肉や居酒屋に出かけ、好物の肉料理を楽しんでいます。医師から見れば不真面目な患者かもしれませんが、Bさんは肌もツヤツヤで声にも張りがあります。風邪などほとんどひかず、毎日あちこちに出かけて人生を謳歌されています。







