米CNNの主任医療特派員として、世界中の戦地や被災地を取材するサンジェイ・グプタ氏は、脳神経外科医の肩書も持つ異色の記者だ。そのグプタ氏がこのほどダイヤモンド編集部の取材に応じ、最近の取材テーマである長寿の秘密や、米国で話題の「脳チップ」の可能性について語った。(ダイヤモンド編集部副編集長 重石岳史)
沖縄、コスタリカ、ギリシャ、イタリア……
世界に5つしかない「ブルーゾーン」取材
――たびたび取材で来日されているそうですね。
長寿について関心を持っているからです。日本の沖縄は、世界で5つあるとされる「ブルーゾーン」(長寿地域)の一つでして、その理由について取材したドキュメンタリーを撮影しました。
実際に沖縄に行って分かったことがあります。まずは「食」です。質の良い食材を選び、過食に走らない。腹八分にとどめる。
それから、「リタイア」についての概念がない。常に目的や生きがいを持って生活し、脳を使う。そして社会との関わりを持ち続けている。それらが他の地域との大きな違いだと思いました。
人間が周囲から断絶され、孤独に生きていることが世界的に問題となっていますが、沖縄には「模合(もあい)」という文化があります。人とつながり、助け合う意識が強い。こうしたライフスタイルが、長寿により良い効果をもたらしていると思います。
――沖縄以外のブルーゾーンはどういった地域なのでしょうか。
コスタリカのニコヤ半島、ギリシャのイカリア島、イタリアのサルデーニャ島、米カリフォルニア州のロマリンダです。
とりわけロマリンダはとても独特な特徴であり、そこには「セブンスデー・アドベンチスト」という宗教が存在します。
肉やお酒を摂取せず、週の第七日(セブンスデー)は安息日として電話などはかけない、人としかつながらないという生活を送っており、街には100歳を超えても現役で手術をされている心臓外科医も住んでいました。
食や人とのつながりに加え、ブルーゾーンの類似点は小さなコミュニティー(集落)で成り立っていることにあります。核家族化が進んでおらず、何世帯もの人たちが一緒に生活しています。
またそれらの人々は、ジムなどに行って運動するのではなく、ただ普通に生活をしている。高地では、かなりアップダウンのある地形が起因していると思われ、ただ歩くだけで相当な運動量です。また結婚生活が長いことも類似点として挙げられ、70年、80年もの間、同じパートナーと生活をしている人もたくさんいます。