英語も教官から「おまえの英語は関西弁なんだよ」「たくわんくさい表現をするな」と言われて内心嬉しがっているあたり、危機感はゼロです。現地には頼れる同期も、相談できる先輩もいない。それでも、「何とかなる」という根拠のない自信と、すわった腹だけはありました。

 そして私は、2歳の娘と、同じく自衛官だった夫とともに、日本人が誰もいない米国の森の奥深くの基地に飛び込みました。

 いまでも鮮明に覚えています。

 重厚な赤レンガ造りの校舎に足を踏み入れた瞬間、目に飛び込んできたのは、整然と翻るスカーレットの旗。そこには「城」の紋章が描かれていました。その瞬間、胸の奥にファンファーレが鳴り響いたような感覚がありました。

「ここから挑戦がはじまる」

指示待ち人間のままでは
現場で通用しない

 とはいえ、現実は問題だらけでした。言葉の壁、文化の違い、軍事ドクトリン(軍隊の基本的原則)への理解不足、リーダーとしての自信の欠如。反骨心はあっても、どこかで「誰も助けてくれない……」「自分は経験が浅いから……」と言い訳を探していました。

 そんな私に、ある教官の言葉が胸に突き刺さりました。

「ここでは階級や学歴で特別扱いされることはない。自分を定義するのは『経験』だけだ。勉強や仕事の動機は、すべて自分のなかにある。自分のエンジンは自分で回せ。セルフスターター(編集部注/指示を待たずに、自分で考えて自律的に行動できる人)になれ」

 そのひと言が、私のなかに眠っていた何かを呼び覚ました気がしました。

「何も発言しなければ、誰も永遠に手を差し伸べてくれない」
「任務の意味は、自分で見出すもの」
「流暢な英語より、自分の意志とストーリーが人を動かす」

 そう気づいたとき、私はようやく「自分の足で立つ」ということを理解しはじめました。

 ここで私が学んだのは、知識や技術以上に「姿勢」でした。

・挑戦の機会は、自らつかみにいくこと
・批判的精神を持ち、多角的に考え抜くこと
・声を上げ、発信して自分と組織に力を与えること
・環境に応じて役割を進化させ続けること