さらに衝撃的なのは、永守氏自身がこうした行動が「パワハラに値し得ること」をある程度自覚していた節があるということです。

 永守氏は経営幹部に宛てた「創業者通信」と呼ばれる文書の中で、「IQ値は低いがEQ値は指導によって上がっていく可能性のある人物にパワハラまがいの厳しい指導をすることで経営幹部に育ててきたと言っても過言ではない」と記しているのです。つまり、自分のやっていることがパワハラの領域に踏み込んでいる可能性を認識していながら、それを「育成」だと正当化していたと捉えることができます。

「朝まで何でやらへんねや!」
グループ会社を詰める役員

 そして、この「恐怖のマインド」は、永守氏直下の幹部にも伝染していきました。

 報告書に収録された業績会議の録音データによれば、グループ会社担当の執行役員が、業績目標の達成見込みが立っていない国内グループ会社の幹部に対して、こう言い放ったとされています。

 前日夜10時まで利益積み上げの検討をしていたと説明する幹部に対し、「何で10時に終わるんですか!いいですか?朝まで何でやらへんねや!」などと声を荒げ、さらに「私は一生懸命やってます、やってられませんなら、辞めたらよろしいがな」と突き放す。相手が言いそうな弁明を先回りして揶揄した上で「なら辞めろ」と切り捨てる、極めて陰湿な恫喝です。

 こうしたプレッシャーの下で、担当者たちは「数字を作らなければならない」という追い詰められた心理状態に陥っていきました。

 実際に、ある国内グループ会社のCFOは「営業利益目標を達成できないと厳しい叱責を受け、連日にわたる不毛な作業を余儀なくされ、業務にも支障を来す。これを回避するため、実際には売上が上がっていないのに売上が上がったと報告をすることもある」と証言しています。

 不正は、個人の悪意から生まれるだけではありません。むしろ多くの場合、組織の構造的な圧力が、善良な人々を不正へと駆り立てるのです。