フライ 大谷選手のリーダーシップを一言でいえば「語るのではなく、見せる」(Show, Don't Tell)。自らの模範的な行動によって人々を導くスタイルです。大谷選手は「打率を上げるにはどうしたらよいか」について、後輩選手に長々と解説したりしないでしょう。

 世界的なリーダーの中には「パワフルな言葉で人々を鼓舞する」タイプの人もいますが、大谷選手の場合はその逆。「語るのではなく、自ら行動して、周りの人々に見せる」スタイルです。

 では言葉ではなく、行動で示すことがなぜ重要なのか。その理由は、周りの人たちがすぐに実践できることにあります。

 私が特に感銘を受けるのは、大谷選手のリーダーシップからは「人徳」だけではなく、「品格」が感じられることです。この2つを兼ね備えた行動ができるリーダーを私は見たことがありません。

佐藤 「品格と徳を兼ね備えた行動」とは具体的にはどのような行動でしょうか。

フライ それを象徴しているのが、2025年6月19日(日本時間20日)のサンディエゴ・パドレス戦で大谷選手が死球を受けた直後にとった行動です。

 事件が起こったのは9回表。ロベルト・スアレス投手が投げた時速約100マイル(約161キロ)のボールが、大谷選手の右脇腹付近を直撃しました。すると、その直前にドジャースの投手がパドレスの選手に死球を与え、乱闘騒ぎが起きていたこともあり、両ベンチは再び一触即発の状況となりました。

 その状況を察した大谷選手は、ベンチを飛び出そうとするドジャースの選手たちをすぐさま手で制し、一塁側のパドレスのベンチに自ら歩いていき、事態の沈静化を図りました。

ドジャースベンチを手で制する大谷選手ドジャースベンチを手で制する大谷選手 Photo:Ronald Martinez/gettyimages