フライ 「大谷翔平:夢を実現する」は2025年12月に出版されるやいなや、ハーバードビジネススクールおよびハーバード大学で注目を集め、すでに同僚の教授がMBAプログラムの選択科目で教えることが決まっています。私自身も、4月に開講されるエグゼクティブ講座で教える予定です。

 議論のテーマは2つあります。1つは、大きな野心を抱いたら、それを実現するために、具体的にどのような行動をとればいいのか。もう1つは野心とレジリエンスを併せ持つにはどうしたらよいのか。

 この事例はあらゆる年代の人々にとって学びとなるケースですから、できるだけ多くの学生やエグゼクティブに教えたいと思います。きっと議論も盛り上がることでしょう。

大谷選手から学ぶ
「野心とレジリエンス」の両立

佐藤 野心とレジリエンスの観点から、大谷選手をどのように分析していますか。

フランシス・フライ教授ハーバードビジネススクール フランシス・フライ教授 Photo by Elie Honein. Courtesy of Harvard Business School.

フライ 一般的に、野心とレジリエンスを併せ持つのは、とても難しいことなのです。逆境から立ち直ることにフォーカスすれば、野心はどうしても後回しになってしまう。逆に野心を抱いて、成功することばかりに気をとられてしまうと、レジリエンスは弱まってしまいます。

 ところが大谷選手は野心とレジリエンスの両方を持ち続けてきました。それどころか、野心がレジリンスを強め、レジリエンスが野心を強め、両方をどんどん強化させている。これは極めて稀有な事例です。

 大谷選手は現在、メジャーリーグでMVPに選出されるなど、めざましい活躍をしていますが、これまでフル出場できなかったシーズンがいくつもあったのをご存じでしょう。通常、怪我や手術で戦線を離脱すると、本調子に戻るのに時間がかかり、復帰後のシーズンは成績が落ちるものです。

 ところが大谷選手の場合は、復帰するたびに、メンタルも技術も強化されている印象があります。こんなケースは見たことがありません。