我々は逆に「他の藻や雑菌が入ったっていいじゃないか」と考えました。たとえ異物が入ったとしても、我々が目的としている藻が、目的のスピードで増えていればそれでいい。いわば生態系として管理する設計にしたことで、問題を解決したのです。

 実はこの発想自体が、東洋的な思想に根付いたものであったようです。当初、欧米のベンチャーには全く理解されないばかりか「そんなことは不可能だ!」と思われていた。ところが、実際に我々はこの方法で成功しているわけですから、かなりの衝撃だったと思いますよ。

「環境に良い」事業をやるなら
2000ヘクタールが産業の最小単位

――そして今や「藻」の研究において、ちとせ研究所が中核となり、多数の企業が参加する「MATSURI」というコンソーシアムを作っています。その内容を教えていただけますか。

藤田 MATSURIは、2021年に藻類産業の構築を目指してスタートした取り組みです。当社は現在5ヘクタールで年間70トンの藻類バイオマスの生産に成功しましたが、この規模はあくまでも実験レベルで、産業にはならない。

ちとせグループが本格稼働させた、マレーシアのサラワク州にある5ヘクタールの藻類生産施設ちとせグループが本格稼働させた、マレーシアのサラワク州にある5ヘクタールの藻類生産施設
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――2030年には、2000ヘクタールで年間14万トンの規模に拡大する計画とされていますが、それはなぜでしょうか。

藤田 実はLCA(ライフサイクルアセスメント)の観点で言えば、現在の規模は建設時の資材投入やエネルギー投入の比率が高くなってしまうため、CO2排出量が上回っている。正直に言えば、5ヘクタールでは「環境にいい」とは言えないのです。

 そもそも藻類の培養には大きく分けて光合成で増やす独立栄養方式と糖を与えて増やす従属栄養方式の2つがあります。我々が光合成にこだわって栽培しているのは、藻を糖で育てる方式にはコストだけでなく環境価値に大きな課題があると考えているからです。