新入社員はAIですぐにアウトプットを出せるが、中身が育っているとは限らない

――AIを使いこなす世代が部下になったら、どんなことに気をつけて育成すればいいのでしょうか。

 AIをフル活用できる世代だからこそ、2つ落とし穴があります。

 1つ目は、ビジネスパーソンとしての基礎体力が育ちにくいことです。昭和から平成の職場環境は、必ずしも褒められたものではありません。でも、すぐに結果が出ない仕事、理屈では割り切れない人間関係――そういった理不尽に粘り強く向き合う中で、やり抜く力が鍛えられてきた部分はある。ホワイト化・効率化が進む今、そこで失われるものをいかに補っていくかが問われています。

 2つ目は、アウトプットは出せるものの、中身が育っていない状態になりかねないことです。人材育成理論として知られるコルブの経験学習モデルでは、「経験→振り返り→概念化→実践」の繰り返しが人を育てるとされています。ところが、AIを使えば一足飛びに熟達者のようなアウトプットが出せてしまい、経験学習のサイクルが回らない恐れがあります。今後は熟達プロセスそのものが、AIを前提としたものに変わっていくでしょうが、AIが出したアウトプットをベースに「なぜこれはイマイチなのか」を先輩と一緒に考えたり、周囲からフィードバックをもらったりすることで、中身がともなった熟達を意識的に実現することが大事になるでしょう。

讃井さん「AIを使って自ら学ぶ若手の方が、正直、私よりよっぽど専門家になれる時代ですよ」と本音を語る讃井さん Photo by M.S.

 人間の上司にしか教えられないこともあります。必要な根回しやキーパーソン、その上司自身の経験など、独自の文脈とAIのアドバイスを掛け合わせて次の一手を考えられるのは人間だけです。それに案外ビジネスの現場では、そっちの方が重要だったりしますよね。