「店が選ばれる理由」を
創造できるか?
外食市場は回復傾向にあるものの、その中身は大きく変わりつつある。インバウンド需要の回復など明るい材料がある一方で、物価上昇や人手不足、消費行動の変化により、従来型のビジネスモデルが通用しにくくなっているためだ。
その結果、企業は単なる店舗運営力だけでなく、「どの業態で、どんな価値を提供するか」を設計できる人材を求めるようになっている。
(1)「安さ」ではなく「来店理由」を設計できる人材
外食において、価格の安さだけで集客するモデルは難しくなりつつある。総合居酒屋に代表される「安く長く滞在する」価値は弱まり、代わって「せっかく行くなら満足度の高い店へ」という志向が強まっている。
そのため企業は、看板メニュー、空間設計、SNSでの話題性などを組み合わせて「選ばれる理由」をつくれる人材を求めている。単なるオペレーション力ではなく、体験価値を設計する力が重要になっている。
(2)複数業態を横断して考えられる人材
大手外食企業では、複数ブランドを持つことが競争力の源泉となっている。好調業態への集中、不振業態の転換、立地に応じたフォーマット変更など、柔軟な戦略が求められる。
このため、1店舗単位の運営だけでなく、業態ポートフォリオ全体を考えられる人材の重要性が高まっている。M&Aや新業態開発も含め、「業態を編集する力」が鍵になる。
(3)データとデジタルを活用できる人材
タブレット注文やインバウンド対応の進展により、顧客データの蓄積と活用が進んでいる。さらにSNSを通じた話題化は、集客だけでなく採用にも影響を与えるようになっている。こうした環境では、現場感覚に加えて、データやデジタル接点を活用して施策を設計できる人材の価値が高まっている。
(4)人口減少を前提に戦略を描ける人材
外食業界は今後、人口減少と立地競争の激化という制約の中で戦うことになる。出店余地の減少や人手不足は避けられない。そのため、「今のうちに拡大する」「ブランドを多層化する」といった長期視点の戦略が重要になっており、これを理解し実行できる人材が求められている。
外食業界は単なる飲食提供業から、業態と体験を組み合わせる産業へと変化している。安さではなく、価値をどう設計するかが競争力を左右する時代になった。その中で、複数の選択肢の中から最適な価値を組み立てられる人材こそが、今後の外食業界を成長を支える存在になるだろう。
(富士経済 フード&ヘルスケア事業部 松田壱成氏への取材<市場分析>を基に編集チームが構成)









