一方、「特進」コース以外の普通科の生徒に対して、教師は学力向上の期待は有しつつも、学習・進学意欲を向上させるような熱心な指導が困難になり、地域全体の大学進学率は低くならざるを得ない実態がある。興味深いことに、同一県内の都市部普通科高校における「特進」コース以外の普通科の生徒は、田垣内が調査した非都市部の高校普通科の生徒と比較して、学力レベルは同等であるものの、大学進学希望や学習時間が上回っていたのである。

 同じ学力レベルであっても、高校の立地によってトラッキングの影響が異なり、大学進学を目指すか否かが変わってしまうことになる。

三大都市圏に多い
地元進学者の割合

 県外進学する際、選択肢の多い三大都市圏へ皆が進学するわけではない。図2は出身高校所在地からみて、同一都道府県内、三大都市圏、それ以外に位置する大学へ進学した割合を示している。

 大学の数が多い都道府県は同一都道府県内、いわゆる「地元進学」の割合が多い傾向にある。関東・東海・近畿地方などの三大都市圏に隣接している地域では三大都市圏への進学割合が多く、東北、九州地方は「それ以外」の割合が多い(*注6)。大学進学において、「どこに住んでいるのか」は、「どこへ進学するのか」を一定程度方向づけることがわかる。

 図2は単年度のデータになるが、大学進学行動に詳しい遠藤健の『大学進学にともなう地域移動』では、47都道府県からどの都道府県の大学へ進学しているのかを50年分整理した膨大なデータがあり、都道府県によって進学先がおおよそ方向づけられていることがわかる。

図2同書より転載 拡大画像表示

*注6 東北では宮城、九州では福岡への進学者が多い。

先輩や兄姉が導く
地元を離れての進学

書影『なぜ「地方女子」は呪縛になるのか』(寺町晋哉、集英社新書)『なぜ「地方女子」は呪縛になるのか』(寺町晋哉、集英社新書)

 なぜ進学先が都道府県によって偏るのか。「地元」を離れて進学された方の中には、「兄姉がいる都道府県だったので親も賛成してくれた」「過去に先輩が多数進学している大学だった」といった経験をもつ人もいるだろう。

 先の遠藤の著書で、福島県の高校生が首都圏進学を目指す要因について検討しているが、兄姉が首都圏にいる高校生は首都圏の大学を希望する傾向にあり、首都圏の大学へ進学する傾向にある高校へ在籍していれば、首都圏の大学を希望する傾向にあることがわかっている。「前例」があれば保護者も安心するだろうし、進路指導を担当する教師もノウハウを含めて指導しやすいだろうし、高校生本人も見通しをもって進学できるのかもしれない。いずれにせよ、家族構成や進学先の高校によって、高校生の進路形成が影響を受けることになる。

 大学進学機会は万人に開かれているようにみえながら、実はそうではない。居住している地域によってはそもそも大学の収容力が足りなかったり、県外への進学も三大都市圏(あるいは大学数が多い県)が近隣にあるかどうかによって左右されてしまったりするのである。このように、一口に「地方」と言っても都道府県によって大学進学の実態は多様である。