村野 「多大なコストを払わなければ守りきれない」という状態のままでは、アメリカの政治指導者だけでなく日本の政治指導者も台湾支援を決断しにくいことに変わりはないでしょう。だからこそ、許容可能なコストで、中国の台湾侵攻を阻止しうる戦い方ができる防衛力をつくっていく必要があります。

 とはいえ、いくらお金をつぎ込んだとしても、海上自衛隊の規模が倍になるということはありません。なぜなら「人」は絶対に減っていくからです。私は石破政権が「自衛官の処遇改善」を優先度の高い政策とした点に全面的に賛成です。でもこれは基本的に「人を増やすための措置」というより「人が減っていくペースを緩やかにするための措置」と捉えるべきと思います。

小泉 定年も、各階級に関して2年ずつ延長することに決定したんですよね。人は減っていくんだけど、そのペースを緩やかにしないと、もう軍事組織として保たない。

村野 そう考えると、我々はどこを減らすべきか。今後の日本の人口動態や自衛隊の充足率を踏まえると、2035年から45年の自衛隊は、現在の必要水準から人員がさらに10~20%少ない規模で防衛力を組み立てなければならないでしょう。

人員不足になる自衛隊を
維持するための3つの選択肢

村野 これに対応するための選択肢は3つほど考えられます。

 1つ目は、現行計画上の戦力規模を維持する代わりに、人員不足によって整備が不十分になるなど、「即応性」が低下することを許容するというものです。2つ目は、「即応性」を維持する代わりに、戦力全体の規模を縮小して、引き締まった自衛隊をつくるというもの。そして3つ目は、人がたくさん必要な一部の有人航空機や艦艇を早期に退役させ、それらの役割を少ない人員とメンテナンスで運用できる無人システムで代替するなどして、抜本的に戦力構成を見直すというものです。

 ハドソン研究所でウォーゲームを繰り返した結果としては、最も説得力があるのは3つ目の選択肢だと考えています。有人アセットを減らすことは、自衛隊の「人が足りなくなる」という課題に適応するだけではなく、最初の戦闘でたくさんの人が死なないようにするということにつながる。つまり相対的に、政治指導者が決断を下す際のハードルを下げることになります。許容可能なコストでコミットできるというのは、抑止力としての信憑性を高められるということです。