村野 日本の協力を前提にするというのは随分と勝手に聞こえるかもしれませんが、冷静に考えて、台湾有事にアメリカが介入をする意思を固めている場合に、日本がアメリカの台湾防衛作戦への支援を拒否するということはあり得ないでしょう。それは日本側から日米同盟にNOを突きつけることと同じですから。
仮にそれで台湾を守りきれたとしても、その後の日米同盟の信頼性は地に落ちます。アメリカからすると「なんのための日米同盟だったのか?」と思われる。
アメリカが台湾を見捨てる
シナリオへの対応は?
村野 より政治的に難しいのは、「台湾を守るためにアメリカは介入しない。でも、台湾より日本のほうが大事だから、日本を守るためにはコミットする」と言われたときでしょう。要するに、新しい「アチソンライン(編集部注/1950年、米国のアチソン国務長官が示した防衛線。日本やフィリピンは含まれた一方で、朝鮮半島は明確に含まれず、これが北朝鮮による韓国侵攻と朝鮮戦争を招く一因とされている)」を台湾と日本の間に引き直すというシナリオです。
小泉 アメリカのディーン・アチソン国務長官が1950年の演説で示した「不後退防衛線」ですね。沖縄からフィリピンを経てアリューシャン列島へと至る線が「不後退防衛線」とされたわけですが、ここには朝鮮半島が入っていなかった。北朝鮮が韓国への侵攻を可能だと考えたのはアメリカが朝鮮半島防衛に本気ではないと見たからだという説もありますが、こういう誤解を与えてはいけないということですよね。
村野 そうです。もちろん、台湾に全て懸けて「ここが最終防衛線だから落としてはならない」と説得するのも1案です。しかし現在のままでは、台湾防衛戦を第1ラウンドとして全て懸けて中国と戦うと、米軍にも大損害が出る可能性は決して低いとは言えない。そのボロボロの米軍と自衛隊で、中国との第2ラウンドを戦う状況が望ましいのか?
それとも第1ラウンドはスキップして、本丸の第2ラウンドまでピンピンした米軍を温存してもらうという形で、日本の防衛線を引き直すほうが我々にとって望ましいのか。これはかなり難しい問いだと思うんですよね。
編集 米軍が台湾を見捨てる選択をしたら、韓国や他の地域も「今後、自分たちも捨てられるんじゃないか」と思うリスクもあるけれど、全面戦争を避けるためにはそういう手段もありうる、と?
『世界の大転換』(小泉 悠、SBクリエイティブ)
村野 アメリカ側がそう選択をしたときに、日本としてはそれでよいのかという問題でしょうね。少なくとも外交上は歩調を合わせる必要があります。戦力の現実を考えると、アメリカが介入せず、日本だけで台湾を守りにいくということはあり得ない。
小泉 韓国が最近、やたらとでっかいミサイルを造っているのは、どう見ていますか?
村野 核弾頭を積む前提なんだと思います。前提というか、「できればいいな」というぐらいの意味ですけどね。
小泉 その能力を持っておこうということですよね。本当にやるかどうかは別として、いざ核武装をするとなったら、そのための所要時間や必要な技術開発要素をなるべく少なくしておく。
村野 そうそう。潜水艦からも撃てるようにしていますしね。







