命を捨てる行為は
正しさをも超越する
井上:それ、面白い!日米を比較するうえで重要な論点になりそうです。坂元さんのいう「正しくない」ニュアンスを言い換えると、「正しさを踏み越える勇気」ということでしょうかね。ここでいう「正しさ」は宗教や道徳、組織やルールといった所与の枠組みで規定される「正しさ」です。
坂元:誰かのために命をなげうつ行為がブレイブであるとすれば、同じ有事であっても通常の戦死は……ブレイブではないってことになりますよね。
井上:うわ、きわめて本質的な問いが!職務で命令によってやる行為と、職務や命令を逸脱して自由意志でやる行為がある場合、ブレイブは後者に対応する。
だとすれば、軍隊の一員として作戦行動に参加して、そのなかで一生懸命戦っても、その結果戦死しても、それはブレイブではない。しかし、命令や義務を超えて、例えば仲間のために自分の判断で身体を張ったら、それはブレイブだと。
「義務を超えた自由さ」というのがブレイブの条件なのかもしれません。
勲章の役割を果たした
靖国神社の功罪
井上:勲章は名誉を可視化する仕組みです。国ごとの仕組みの違いはあっても、国家は必ず「名誉の原理」を持っています。君主制でも大統領制でも、たいてい国家元首の名において授与される。
米英の事例において興味深いのは、軍人にとって「最高の名誉」は、戦場において命令や義務を超えた勇敢な働き(ブレイブ)をしたことに対して与えられる、ということです。
坂元:アメリカでは名誉勲章を受章すると、一定額の手当や特別旅行など手厚い恩典とともに、階級に関係なく先に敬礼をされる特権が与えられるそうですよ。
井上:軍の最高責任者も、受章者には階級の上下なく敬礼をする。文字通り、名誉の原理は階級を超える、というのが面白いです。イギリスはもともと階級社会なので勲章の仕組みがややこしいけれど、アメリカの名誉勲章はシンプルで、名誉の原理をうまく制度に落とし込んでいることがわかります。







