求められる人材像と
変化の理由

 毎年多くの公務員を輩出している立教大学では、近年、国税専門官などの専門職の人気が高まっているという。初任給の高さに加え、自らの学び(会計・経済など)を直接生かせる点が評価されている。

 背景には、「やりたいことを明確にしたい」という志向の強まりがある。国家公務員は省庁ごとに業務が固定されるため、明確な関心を持つ人が向かう。一方、地方公務員は福祉からまちづくりまで幅広い分野を経験できるため、幅広い興味を持つ人材が選ぶ傾向がある。

 また、従来は東京大学、京都大学などの最上位層が多かった国家総合職でも、民間企業への流出により席が空き、志のある学生が入り込みやすくなっている。

 特に地方自治体では、求められる人材像は明確だ。幅広い分野に対応できる好奇心(ゼネラリスト性)、説明責任を果たすための論理性、課題を自ら発見し提案できる主体性といったことが求められている。

 公務員は政策を住民に説明する立場であり、「なぜこの施策を行うのか」を納得感を持って伝える力が不可欠である。また、単に行政サービスを受ける側ではなく、提供する側として改善を考える視点が評価される。例えば施設見学ひとつでも、課題や改善案まで踏み込めるかが差になる。

 もう一つの変化がDX(デジタルトランスフォーメーション)対応である。行政は民間に比べて意思決定に時間がかかり、特に小規模自治体ではIT投資が進みにくい傾向にある。そのため、ITに明るい人材やデジタル広報などのスキルを持つ人材は強く求められている。

 さらに、民間人材を期間限定で登用する動きも広がる。デジタル領域などでは、外部の専門家を課長級で採用し、任期終了後に民間へ戻るケースも見られる。これは、内部でスペシャリストを育てにくいジェネラリスト組織の限界を補う動きといえる。

 公務員は終身雇用というイメージが強いが、実態は変わりつつある。20代のうちにコンサル、金融、メーカーなどへ転職するケースも増加している。公務員試験合格という実績や基礎的な思考力が評価され、若手人材として市場価値を持つためだ。

 結果として、公務員は「一生の職業」ではなく「キャリアの一ステップ」に変化している。

 採用前段階でも変化が進む。従来、公務員インターンは大学経由が主流だったが、立教大学を中心に早稲田・慶應など関東有名私立7大学が行政に働きかけ、大学を経由せず自治体にインターンの参加を直接応募できるようになり、関東ではインターン制度が簡素化された。より多くの学生が行政の現場を体験し、ミスマッチの防止にもつながると期待されている。

 採用の間口は広がり、試験制度も柔軟化する一方で、求められるのは受け身の姿勢ではない。自ら課題を見つけ、論理的に説明し、時にはデジタルや外部の力も活用しながら行政を変えていく――そうした主体的な人材が必要とされている。

 言い換えれば、公務員は「安定」ではなく「挑戦」の場へと変貌しつつある。その変化をどう捉えるかが、これからのキャリア選択を左右することになる。

(立教大学 キャリアセンター 菅賀健太氏への取材を基に編集チームが構成)