Photo:Kuninobu Akutsu、Katsumi Murouchi/gettyimages
2013年に始まった日本銀行の異次元緩和は、国債やETFの大量購入を通じて金融政策の原理原則を大きく変えた。だが「2年で2%」の物価目標は達成されず、財政規律の緩みや市場機能の低下という副作用が残った。特集『ベスト経済書2026』(全10回)の#5では、『異次元緩和の罪と罰』の著者そして元日銀理事である山本謙三・オフィス金融経済イニシアティブ代表が、11年に及んだ政策の功罪と、植田日銀が背負う正常化の難路を語る。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 竹田孝洋)
長い歴史の中で守ってきた
中央銀行の原理原則があったのだが
この本を書こうと考えたのは、2013年4月に始まった日本銀行の異次元緩和について、きちんとした総括が必要だと考えたからです。
私は12年まで日本銀行に在籍し、理事も務めました。金融政策に最も深く関わったのは、1990年代後半、ゼロ金利政策が導入された時期です。当時、企画課長として金融政策決定会合の事務方の取りまとめを担っていました。
山本謙三(やまもと・けんぞう)/1954年生まれ。1976年日本銀行入行。98年企画局企画課長として日銀法改正後初の金融政策決定会合の運営に当たる。金融市場局長、米州統括役、決済機構局長を経て2008年理事。12年NTTデータ経営研究所取締役会長。18年からオフィス金融経済イニシアティブ代表。 Photo by Kuninobu Akutsu
中央銀行には、長い歴史の中で培ってきた原理原則があります。最終的な目的は通貨価値の安定であり、それには物価の安定だけでなく、金融システムや決済の安定も含まれます。そのため、市場経済の国の中央銀行は、財政ファイナンスを行わない、保有資産の健全性を確保する、市場への介入を最小限にとどめる、という考え方を基本としてきました。
中央銀行は本来、通貨価値や金融システムの安定を守るため、市場への介入を最小限に抑えてきた。次ページでは、山本氏が異次元緩和は、その原理原則をどのように転換したのかを語る。







