もっとも、初年度(2016年度)の時点では定員も非常に少なく、各学部数名、全体で100人程度という枠だった。その後もこの枠は変わっておらず、1学年約3000人のうち約100人(3~4%)という比率が続いている。つまり、推薦合格は「東大の中のごく少数派」ではあるが、近年ではその存在感が年々高まっている。

 実際、2025年度入試(令和7年度入学)では推薦合格者87名(男性44名・女性43名)。女性比率49.4%は過去最高であり、一般入試で女性が約20%にとどまることを考えると、推薦入試が「女性に開かれた門戸」として機能していることがわかる。また、関東圏出身者の割合が約57%と、地理的にはやや偏りがあるものの、秋田・鳥取・長崎など地方公立高校からも合格者が出ている。

 つまり、東大推薦とは、「点数以外の力」を問う試験であると同時に、「地域・性別・経験の多様性」を重視する入試でもある。筆記偏重だった東大が、初めて「多様な人材を迎え入れるための仕組み」を制度として導入した――それが2016年の転換点だったのだ。

成果よりも重視するのは
「過程」と「主体性」

 推薦入試の試験内容は、「書類選考」「面接・小論文」「大学入学共通テスト」の3段階で構成されている。

 まず1次選考で行われる書類審査では、「調査書」「推薦書」に加え、各学部が指定する活動実績の証明資料を提出する。これには、全国・国際レベルのコンテストの入賞記録、探究活動の研究レポート、発表スライド、学会発表要旨、論文、ボランティアや地域活動の記録、さらには実用英語技能検定やTOEFLなどの語学力証明書などが含まれる。学部ごとの出願要件は細かく、同じ「推薦」でも求められる人物像が全く異なる。受験者は「自分の探究内容がどの学部と親和性があるか」を慎重に見極める必要がある。以下が各学部の出願要件である。

 法学部は「社会問題を発見し、議論できる力」を重視。面接ではグループディスカッションと個別面接を組み合わせ、論理的思考力・コミュニケーション能力を評価する。