「いかに高級に見せるか」ではなく、「どこまで現実的に軽く造るか」
F:例えば売価をあと100万円高くしたら、もっとハイテン材をブチ込んで、もっと何十kgも軽く造ることもできるのですか?
大:可能です。コストを度外視すれば、もっと軽くすることは可能です。でも高くなり過ぎたスズキ車ってどうなんでしょう?意味があるのか。果たしてそれがお客さまに響くのか。商品として意味があるのか、という話ですよね。
F:そこが実にスズキ的ですよね。お金をかければもっと軽くできる。でも、そんなことをしたら価格が上がる。造りにくくもなる。技術的にできることと、商品としてやるべきことは違う。500万円近いEVを造っても、考えていることは「いかに高級に見せるか」ではなく、「どこまで現実的に軽く造るか」なんですね。
大:はい。BEVですので、従来と違うところはあります。バッテリーの重さもありますし、高電圧への対応もあります。そこは必要なものとして入れなければいけません。ただ、その中で軽量化の技術は入れています。繰り返しますが、EVとしては、そこまで重くはないと思っています。
「ドッカン加速」より「乗り換えても怖くないEV」
F:EVというと、ドッカン加速を売り物にするクルマが多くあります。アクセルを踏んだ瞬間に首が後ろへ持っていかれるような世界。ですがe VITARAは、そこをあまり前面に出していません。
大:はい。EVはモーターで走るので、設定ですごい加速感を出すことが可能です。他社ではそうしているクルマもたくさんあります。
e VITARAもそこそこに良い加速はしますが、いわゆるドッカン設定にはしていません。そうしてしまうと、ガソリン車から乗り換えた方が「やっぱりEVは怖い」と感じてしまう恐れがあるからです。「ガソリン車から乗り換えても違和感がない」というところは相当意識して造りました。
F:設定によってはドッカン加速にすることも可能だった?
大:もちろん可能です。簡単にできます。それだけのポテンシャルは持っています。でもそうする意味がないと我々は考えます。
F:速さで驚かせるEVではなく、怖がらせないEV。これはいいですね。実にスズキらしい。
520kmという「精神安定剤」
F:価格について伺います。最上級グレードで490万円台。スズキとしてはかなり高い。安いグレードを選ぶと100万円ほど違う。その差は何でしょう。
大:まずはバッテリー容量です。安いほうは49kWhで、上のほうは61kWhです。航続距離で言うと、低いほうでもWLTCモードで433kmあります。61kWhの2WDで520km、4WDで472kmです。
もともと500kmは超えたいね、という考えはありました。もちろん実際に走るのとモード走行の数字は異なってきますが、これくらいの数字があれば普通に不安なく乗れるかな、というところです。
F:EVは残り距離が減ってくると、本当に嫌な汗が出ますからね。過去に某EVの試乗で走行可能距離が10kmを切ったことがありました。10kmを切ると、数字が消えるんですよ。修行僧の気分でした。もう祈るしかない。そういう意味で、520kmという数字は精神安定剤として大きいですね。
大:はい。EVに乗る方にとって、航続距離は非常に大事なポイントだと思います。今回の容量は、そのあたりも見ながら決めています。







