何が起きても動じない米金融市場、株価・VIX・社債の「奇妙な安定」が崩れる条件Photo:Spencer Platt/gettyimages

米金融市場を包む奇妙な安定
市場全体では大きな波乱なし

 米国の金融市場は今、奇妙なほどの安定に包まれている。個別の銘柄や個別のセクターでみると激しい動きがみられるが、市場全体では大きな波乱が生まれない。

 株式市場でいえば、AIへの代替懸念からソフトウエア株が売られ、AIブームの火付け役の一つだったオラクル株は高値から6割以上も下がった。マグニフィセント・セブンのうちでもマイクロソフトは高値から最大で4割近く下がり、最近では華々しくデビューしたスペースXが早くも高値から半分以下にまで下がっている。

 それでも、S&P500やナスダック総合指数などの株価指数は高値圏で推移しており、市場全体では大きな波乱にはなっていない。

 “恐怖指数”とも呼ばれるVIX指数も基本的に安定している。最近は様々なイベントリスクが生じているが、一瞬ピクリと動く程度で、大きく跳ね上がることはない。

 株式市場だけではない。AI投資ブームは大規模クラウド事業者、いわゆるハイパースケーラーによる巨額の資金調達を引き起こしている。

 主要6社の社債発行額は、今年すでに過去の平均的な発行額の10倍程度に相当する40兆円規模にまで膨れ上がっている。世界の社債市場全体でみても過去最高の580兆円規模の債券が発行されている。さすがに値崩れを起こしている銘柄もあるが、社債市場全体でみれば極めて安定的に推移している。

 グラフ1は、社債市場の中で最もリスクに敏感なハイイールド債市場における平均スプレッドの推移を示したものだ。社債のスプレッドは投資家のリスクへの警戒度合いを反映するもので、市場の緊張が高まればスプレッドも拡大する。しかし実際には、市場全体でみたスプレッドの水準はほとんど動いていない。ちなみに、現在の社債のスプレッド水準は、歴史的にほぼ最低水準である。

 このように、何が起ころうとも大してストレスがかからないのが今の市場なのである。