運河庁はしばしば十分な告知なしに値上げをするため、海運会社や業界団体からしょっちゅう抗議を受けてきました。ただし、2023年末以降、中東情勢の悪化を受けて、スエズ運河の通航を回避する動きが続いているため、スエズ運河庁は2025年5月から大型コンテナ船の通航料を15%割り引いたり、海運会社との協議を進めるなどの対策に乗り出しています。

 海運会社からすれば、通航料は大きなコストです。コンテナ船の運航コストのうち、スエズ運河やパナマ運河の通航料は大きな割合を占めます。アジア・欧州航路では約10%です。

 ただ、これまでもスエズ運河とパナマ運河は頻繁に値上げを繰り返してきたにもかかわらず、2010年代にコンテナ運賃は下がり続けていました。この状況を踏まえると、そもそも運河通航料の値上げが輸送運賃に反映されるのかも怪しいといえます。

 一方で、世界の商品価格に対する輸送コストは決して大きなものではなく、コンテナ運賃が上昇したとしても物価への影響が小さいことが知られています。運河通航料の値上げが物価に与える影響は軽微なものにとどまるでしょう。

戦争によって「海の物流」が
大きく変わった

 ウクライナは小麦やトウモロコシの主要な輸出国であり、鋼材や鉄鉱石の輸出も多い国です。2022年2月24日にロシアがウクライナへの侵攻を開始した直後から、食料やエネルギー等の国際海上輸送が大きな影響を受けました。

 黒海とアゾフ海に面する主要な商業港が封鎖され、コンテナ船社はウクライナ発着貨物の引き受けを停止したほか黒海ではトルコ船社や日本の大船主の一つである日鮮海運グループが保有するばら積み船が船尾部分に砲撃を受け損傷しました。

 コンテナ以外の海上輸送では、ロシアのウクライナ侵攻による貿易ルート再編によってタンカーによる輸送需要が急増しました。LNG(液化天然ガス)輸送船でも欧州のLNG輸入が急増し、新興国での天然ガス需要が底堅いという見方も広がり、LNG輸送船の需要拡大が起こりました。