ジョブズが、1998年に発表したiMacは、半透明でカラフルなボディーと、丸みを帯びた親しみやすいデザインで、世界的に大ヒットした。

初代iMacの“丸み”は日本の影響か…ジョブズがその手触りに魅了された「伝統工芸品」の正体初代「iMac」 提供:著者

 このデザインには、日本の伝統的な壺が大きなインスピレーションを与えていた可能性がわかってきた。その後、アップルの製品はモニターからマウスに至るまで、いたるところに美しい「丸み」のデザインが盛り込まれていった。

日本の美意識に学んだ
アップル製品のシンプルさ

──彼はあなたに、日本の壺のカーブや丸みを製品に取り込みたいと言ったことはありますか?

「彼は丸みのある面が好きでした。初代のマッキントッシュを見れば、コンピューターの側面に丸みがあるのがわかるでしょう。彼がそう言っていたのであれば、私には納得がいきます」

──アップル製品と日本の美意識のシンプルさは関係があるのでしょうか?

「スティーブはそう信じていました。彼は、禅の日本的な解釈は英知だと信じていました。彼にとって英知の解釈とは、『洗練を突きつめるとシンプルになる』であり、シンプルさには目的があるということでした。彼はこう言っていました。

『日本の文化に偶然の産物はなにもない。すべてのものには目的があり、それは何世紀にもわたって発展し、継続するのだ』と。

 アメリカでは、素早く製品を作って人気が出ても、すぐに消えてしまいます。スティーブが目指したのは、そういうものではありません。彼は日本文化から時代を超えた価値や物事には理由があることを学びました。彼がやることにははっきりとした目的があり、偶然でやったことは1つもありませんでした。彼は、『アップルのものづくりに妥協はない』と言いました」

『スティーブ・ジョブズ1.0の真実』書影スティーブ・ジョブズ1.0の真実』(佐伯健太郎、晶文社)

 ジョブズが探していたのは、手触りの良い究極のデザインだった。iPhoneの形が、2007年のデビュー以来、基本的に大きく変わっていないのは、それを象徴していると思うのだ。

 最後に、あらためてスカリーさんに聞いた。

──彼にとって日本の文化とは何だったと思いますか?

「スティーブの人生で一貫していたことがあります。それは、日本を見て、そこから学ぶということです。彼は、和食、日本の美術、そして、職人の技を愛していました。その1つひとつが、彼の人生を形作る重要な要素になっていったのです」

 僕は感動していた。36年間の記者生活の中で、もっとも完璧にできた最高のインタビューだった。