中長期的にはますます
年金運用が厳しくなる恐れ

 一方、中長期的には、日本の年金運用は引き続き厳しいと予想される。現在の株高は、どこかの時点で調整局面を迎えるだろう。そのとき、現在のゆとりがなくなる懸念は非常に大きい。

 世界各国の金融政策は重要な転換点を迎えている。米国とイランの停戦合意で幾分か低下したものの、米欧の中央銀行はインフレ抑制スタンスを緩めていない。リーマンショック後、金融緩和の効果を高めるために導入した「フォワードガイダンス」(金融政策の運営方針をあらかじめ示すこと)の修正が必要との主張も増えている。

 7月上旬、日銀の物価上昇対策が後手に回っている懸念から、長期金利が30年ぶりの水準に上昇した。金利上昇の影響により、企業の業績への懸念は高まるだろう。この流れで、AI関連銘柄を中心に世界的に株価が調整するリスクもある。

 データセンターなどAI関連への投資の急増で、財務内容が悪化する懸念もあることから、プライベート・クレジット・ファンドの運用状況も悪化しつつある。株価の下落とファンドの価値下落が本格化すると、年金基金の運用は悪影響を受ける。

 何より、日本の少子高齢化が想定よりも早いため、公的・私的年金の保険料は減少し、給付負担は高まることが予想される。企業の年金基金では、確定給付型年金を維持する負担は増す。確定給付型では、企業は従業員に将来の給付額を約束する。運用実績が約束した給付額を下回る場合、企業が追加で資金を出す仕組みだ。

 日本の公的年金は、現役世代が支払った保険料を、その時々の年金受給世代に支払う賦課方式である。現役世代の減少により保険料収入は減少する一方で、国民の福祉水準を維持するためには、年金給付額を引き下げることは難しい。その結果、年金の積立金(将来世代のために積み立てたお金)は枯渇する。

 枯渇を補うために、政府は国債を発行することで公的年金制度を維持してきた。年金制度は、国債発行による将来世代への負担の先送りに依存しているともいえる。こうした構造問題は、最近の金利・株高による改善程度では解決することは難しい。