足元のスズキの業績は絶好調だ。2026年3月期は売上高6兆2930億円で過去最高、インド子会社の純利益も約2480億円で過去最高。これを受けて俊宏社長は、「インド市場シェア50%。さらに同国のEV(電気自動車)生産・販売・輸出で第1位を目指す」と高らかに宣言した。

 日本国内の実績も申し分なく、軽自動車に小型乗用車も加えた新車販売ランキングではトヨタ自動車に続く2位の快挙。ホンダや日産自動車を追い抜いたのは初だ。この地位を固め、浜松工場の生産台数70万台も堅持していく方針だ。

 27年3月期の世界販売台数は、前期比7%増の355万台になる見通し。達成できれば、ホンダを抜いて、日本メーカーとしてトヨタに続く2位に浮上する。

 牽引役となるインドでは、トヨタとの連携を強める。トヨタはインドで新たに3工場を建設中で、中東・アフリカ市場への輸出拠点とする計画。スズキ×トヨタ連合で、インドを拠点としたグローバルサウスに照準を当てる一大プロジェクトが進行中なのである。

 このように俊宏氏は、修氏とはまた違った形で経営スタイルを確立している。さらに日本自動車工業会の副会長として、業界リーダーの経験も重ねている。「自分もあと30年くらい経ったら、鈴木修と比較されるに値する経営者になれたらいいなと思う」などと謙虚な姿勢は崩さないのが、俊宏氏らしい。

 直近7月初旬には、日印首脳会談に合わせて、スズキは次世代エネルギー協力としてバイオガスプラント建設の覚書を交わした。続く日印経済フォーラムでは、スズキが新工場の開所式を行い、インドが掲げる「メイク・イン・インディア」政策への貢献を強調した。

 偉大なカリスマ経営者が残した財産をしっかり伝承しつつ、新しい時代に合わせた経営にうまくシフトしているのが明確にわかる。トヨタの豊田家とはまた一味も二味も違う、創業家による経営スタイルだ。

 その2社が協力関係にあることも見逃せない。自動車メーカーで今もっとも面白い2社といえるだろう。

著者・佃義夫さんのプロフィール