例えば、人件費(=従業員給与・賞与+賞与引当金繰入額+退職給付費用+福利厚生費)は19年8月期の約469億2300万円から25年8月期の約716億5100万円に増加しているが、売上高に対する人件費の割合(人件費率)は約30%から約28%へと約2ポイント低下している。また、賃借料は同期間に約206億7300万円から約195億6400万円と、金額そのものは大きく変わっていないが、売上高の増加によって賃借料率は約13%から約8%へと約6ポイントも低下した(四捨五入の誤差があるため、%値の差とポイント数は一致していない)。
これが、原価率上昇の影響を打ち消した、販管費率低下の正体だ。
客数の伸びにも限界が見え始めた……
サイゼ「次の一手」はどこにある?
一方で、低価格と生産性向上に支えられた客数増加にも限界はある。26年6月の客数前年比は108.8%となり、22年12月以来、3年半ぶりに110%の大台を割り込んだ。また、26年4月には26年8月期の業績予想について、連結営業利益の下方修正を行った。食材価格の上昇による原価率の上昇が主な要因だ。原材料や人件費などの上昇が続く中で、売上成長が鈍化すれば、収益性低下のリスクは高まる。
とすれば、サイゼリヤとしては、値上げにより価格転嫁を行うか、あるいはさらなる売上成長のための施策を打つことが必要となる。社長の松谷秀治氏が再三「値上げすることは考えていない」と表明していることを踏まえれば、短期的に値上げの方向に向かうことは考えにくい。では、売上アップのための糸口はどこにあるのか。
1つの方向性は、既存店舗のさらなる稼働率の向上だ。具体例としては、モーニングやアイドルタイム(ランチとディナーの間の時間帯)の活用が挙げられる。サイゼリヤでは25年6月からモーニング「朝サイゼ」を開始し、首都圏を中心とした24店舗でサービスを展開している(26年7月13日時点)。加えて、稼働が低いアイドルタイムの客数を増加させることができれば、さらに売上高を高めることにつながる。
サイゼリヤの収益性向上のポイントは、稼働率の低い時間帯をいかに活性化し、客数や売上高の増加につなげられるかにある。
著書に『決算書の比較図鑑』『会計指標の比較図鑑』『武器としての会計思考力』『武器としての会計ファイナンス』『粉飾&黒字倒産を読む』(以上、日本実業出版社)、『決算書×ビジネスモデル大全』(東洋経済新報社)など。著書累計発行部数10万部超。
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