その後の撮影で、佐藤が橋本の顎付近をアドリブで触る場面があった。フジ側の説明によれば、このことについて橋本がセクハラを訴えたわけではないが、これをきっかけとして、橋本側の事務所社長が、事前の確認が佐藤側に伝わっているのかをプロデューサーに確認し、さらに今度は佐藤側に伝えるように要請があったのだという。

 これを受けて、プロデューサーは再度、佐藤側のマネージャーと相談。この際に、マネージャーが、プロデューサーから直接佐藤にその旨を伝えてほしいと言ったため、そのようにしたという。

 しかし佐藤本人にとってはこのことが相当ショックであったようで、その後、直接橋本の楽屋を訪れ、新潮記事によれば「可能なかぎり気をつけますが、夫婦役を演じる以上、絶対に接触しないとお約束することはできません」などと告げた。佐藤は新潮の取材に対し、橋本は頷いたものの楽屋から1時間半出てこなかったと説明している。

 新潮によると、この後佐藤は精神的に参ってしまい、他の共演女優を前にしても「彼女は触ってよかったんだっけ?」と考えたり、自分が触れられても驚く状態になってしまったという。

 そして、一度目の楽屋訪問から約2週間後、佐藤は再び橋本の楽屋を訪れた。その際に「これからも夫婦役を務める相手に対して、日常的なものも含む身体接触に関する制限を事前に共有することなく求めていくのであれば、役者は続けるべきではないと僕個人は思います」(新潮記事より)と伝えたのだという。

 この佐藤の発言についてはフジテレビの声明と新潮記事で内容が一致している。一方、佐藤は「橋本さんは最後に笑顔で応じてくださいました」としているものの、フジテレビの声明では「その発言の内容や口調の強さに激しく動揺し、しばらくの間、女性俳優は涙が止まらない状態になりました」となっている。

どの現場でも起こりうる掛け違い

 経緯が長くなったが冒頭に戻ると、掛け違いを生んだ要因の一つは、演技上の配慮事項が佐藤のマネージャーで止まっていて、佐藤本人には事前に共有されなかったことにある。

 橋本の事務所は、情報共有についてフジテレビに委ねた。フジテレビは佐藤のマネージャーに意見を聞き、佐藤のマネージャーが「演技に影響が生じかねない」という理由で佐藤本人には伝えなかった。それぞれがそれぞれの関係者、あるいは当事者に「配慮」した結果が、最悪の事態を招いてしまっている。

 佐藤は橋本に対して2回目の楽屋訪問で「日常的なものも含む身体接触に関する制限を事前に共有することなく求めていくのであれば」と言っているが、ここにはいくつかの誤解が見える。